2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける終末期医療の倫理的・法的問題に関する国際共同研究
Project/Area Number |
18KK0001
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 高宏 京都大学, 法学研究科, 教授 (00218504)
佐藤 恵子 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (10398456)
鍾 宜錚 大谷大学, 文学部, 研究員 (10793672)
長尾 式子 北里大学, 看護学部, 准教授 (40396700)
恒藤 暁 京都大学, 医学研究科, 教授 (70372604)
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 終末期医療 / 生命倫理学 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本・韓国・台湾の終末期医療における共通の課題や、優れた実践を明らかにし、望ましい死のありようやそれを実現する体制を整備することを目指す。そのために日本と韓国と台湾における緩和ケア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)、倫理コンサルテーション、生命維持治療の中止、医療者への教育等に関する規制や実践を比較検討する。これを実施するため、(1)法制度の比較(2)臨床現場での実践と課題(3)市民の意識調査という3つの課題を中心に研究を進める。 2019年度における注目すべき研究成果は、近年、ACP の実践を患者自主権利法に盛り込むなど、その取り組みが国際的にも注目されている台湾での調査を行った点である。本研究班は、台湾における ACP 実践の現状と課題について調査することを目的に、台中市、埔里鎮 (南投県)、台北市を訪ね、各地の法律・医療の専門家の意見を聞いたほか、病院を訪問し ACP の話し合いの中心となるキーパーソンと意見交換を行った。 その結果、主に次の 2 点がわかった。第一に、ACP の話し合いは主に病院外来、いわゆる「ACP 外来」で行われており、話し合いのファシリテーターとして重要な役割を担っているのがソーシャルワーカーであるということがある。第二に、ACPの実践は、台北市内のモデル病院と地方の基幹病院とではカンファレンス実施数およびその取り組み方に相違があり、 地方の基幹病院では ACPによる事前指示の取得よりも、日常日々の患者・家族のケアやコミュニケーションに重きが置かれているということがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、台湾出張によって台湾における法律・医療の専門家との意見効果ができただけでなく、アドバンス・ケア・プランニングの実践のされ方に関する、台湾の特徴及び日本との差異を見出すことができた。このような成果は、終末期医療における共通の課題、優れた実践、望ましい死のありようを分析しようとする本研究にとって、基礎となるデータを提供することとなった。また、関連法案やガイドラインの翻訳も進んでおり、立法の必要性やその内容についての相互理解も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 韓国と台湾の法・ガイドラインの日本語訳を進める。加えて、日本の法・ガイドラインについての英語訳の作成にとりかかり各国の法制度の特徴を広く発信することに努める。 2. 昨年度得られた、アドバンス・ケア・プランニングに関する台湾の特徴と日本との比較に基づいて、アジアの文化的背景に根差した終末期医療の在り方に対する、提言を行う。 3. グリーフ・ケアやスピリチュアル・ケアといった「望ましい死」に密接に関連する実践に目を配り、日本・韓国・台湾における死生観を巡る異文化理解を深める。 上記については、昨年度と同様に、研究代表者が統括し、また、研究分担者、海外の共同研究者、研究協力者との情報共有については、ウェブ会議システムを用いて月1度を目途に研究進捗状況の報告を行う。 4. 新型コロナヴィルス感染症に関連した各国の終末期医療に関する対応について調査検討を行う。
|
Causes of Carryover |
海外からの研究者の招聘を検討していたが、新型肺炎の影響等があり、延期を余儀なくされたため。本年度は、海外の研究者とのやり取りは主にオンライン上のものとなるかもしれないが、各種法律やガイドラインの翻訳、死生観をめぐる文献の渉猟とその紹介といった事柄には継続して注力し積極的な発信を行っていきたい。
|
Remarks |
本プロジェクトの成果を広く公表するために立ち上げた、本ウェブ・ページは、日本語だけでなく英語でも読むことができるようになっている。
|
Research Products
(27 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 正義論2019
Author(s)
宇佐美 誠、児玉 聡、井上 彰、松元 雅和
Total Pages
294
Publisher
法律文化社
ISBN
ISBN978-4-589-04028-2
-
-