2023 Fiscal Year Research-status Report
A survey on the music and rituals in East European Countries: focusing on folklore and on folk song adaptations
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18KK0002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 信宏 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (20221773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 桂 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 講師 (20582852)
俵木 悟 成城大学, 文芸学部, 教授 (30356274)
上畑 史 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 機関研究員 (60827864)
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Project Period (FY) |
2019-02-07 – 2025-03-31
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Keywords | 東欧演歌 / ポップフォーク / クルターグ / 来訪神行事 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、A)東欧の「コレダ」系の行事と日本の来訪神行事の調査・比較検討を行い、B)音楽における「ポップフォーク」(民俗的要素をもつポップ・ミュージックのジャンル)および民俗音楽の編曲作品、という2つのレヴェルで東欧と日本の比較を行ってきた。 2023年度の一番大きな研究成果は論集『東欧演歌の地政学:ポップフォークが〈国民〉を創る』を出版したことである(アルテス出版、2023年4月、全354頁)。これは9つの章、序論、対論、2つのコラムから成り、本研究の研究代表者、研究分担者、海外共同研究者などを含む12名の共著者によるものである。この成果に関しては『東京新聞』、および雑誌『レコード・コレクターズ』などに書評が掲載され、また音楽本大賞の第一次選考にも残るなど、一定の評価を得たと考えられる。 また昨年度オランダで調査をおこなった作曲家ジェルジ・クルターグ(2026年-)について、この調査の成果を盛り込んだ英語論文をまとめることができた。クルターグは、「コレダ」系の行事の一つ、ルーマニアの「コリンダ」に取材した大作を書いた作曲家である。論文は、彼のピアノ作品集「遊び」に関するもので"Virag az ember… Mijakonak" and related pieces: who was Mijako?というタイトルである。これはクルターグ研究を牽引している二人の研究者(Rachel Beckles Willson & Gergely Fazekas)によるContemporary Composersシリーズのクルターグの巻に収録される予定である。 一方、当初予定では日本の村落、島嶼における調査がまだ残されているが、これについて2024年の2月に能登の「あまめはぎ」を調査する計画を立てていた。しかし能登半島の震災により行事自体が中止となり、もう一年の延長を余儀なくされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり、A)東欧の「コレダ」系の行事と日本の来訪神行事の調査・比較検討を行い、B)音楽における「ポップフォーク」(民俗的要素をもつポップ・ミュージックのジャンル)および民俗音楽の編曲作品、という二つの焦点のうち、B)に関しては編著の刊行によって一つの達成を見ることができた。また「コレダ」系の行事の一つ、ルーマニアの「コリンダ」に取材した大作を書いたジェルジ・クルターグ(2026年-)の作品「遊び」に関する論文を完成し、英語のクルターグ論集に寄稿することができた(編集中)。 ただA)の課題については、初年度の「えんずのわり」調査以後、コロナ禍のゆえに実質的な調査が行えず、今年度も震災の影響もあって調査を延期せざるを得なかった。 これらを総合して「やや遅れている」という状況であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施できなかった「あまめはぎ」の調査を計画しているが、年1回の機会しかなく、今年度のように自然災害などで調査が不可能になることも考えて、宮古島の「パーントゥ」なども調査の対象とできないか、可能性を探っているところである。
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Causes of Carryover |
2024年2月3日、能登の「あまめはぎ」を現地で調査する予定で、その調査旅費を確保していたが、震災により行事自体が中止され、調査を行うことが不可能となった。これが次年度使用額が生じた主たる理由である。 2025年に行事が再開されるなら、これを調査する予定であるが、現地の状況に配慮する必要もあり、代替的な調査を行えないか(同じ来訪神行事である宮古島の「パーントゥ」など)現在可能性を探っているところである。
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