2019 Fiscal Year Research-status Report
The research on propagation of the world paper culture and elucidation of "Samarkand Paper".
Project/Area Number |
18KK0003
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
柴崎 幸次 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (10315872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 直希 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (00580945)
岩田 明子 愛知県立芸術大学, 美術学部, 非常勤講師 (50830741)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | サマルカンド紙 / 紙の伝播 / 芸術表現 / ウズベキスタン / 和紙 / 手漉き紙 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
サマルカンド紙は8世紀後半、中国からサマルカンドに紙の技術が伝播し出現した紙である。羊皮紙に代わる支持体として、コーランや細密画の発展とともにイスラム世界において進化し、500年の時を経て西洋にも伝播したが、現在技術が断絶し歴史や製法は明らかではない。本研究は、手漉き紙としてサマルカンド紙に焦点をあて、世界の紙の伝播を解明するための調査研究であり、“紙と芸術表現”の調査を中心に国際共同研究を行う。 サマルカンド紙の性質や定義を明確にするため、古いサマルカンド紙の調査を進める必要があり、ウズベキスタンにおいて研究体制の構築及び現地での調査を行った。 令和1年7月に、サマルカンド、タシケント、ブハラ、ヒヴァ等を訪問し、昨年度それぞれの研究協力機関において依頼したサンプル紙片を預かった。訪問先は、タシケントでは、芸術大学、国立図書館、芸術アカデミー、国際イスラムアカデミー、科学アカデミー東洋学研究所、サマルカンドではサマルカンド大学・図書館・博物館、ブハラではブハラ国立博物館、ヒヴァではイチャン・カラにて歴史家コミル氏を訪ねた。これらの機関には[1次調査](年代のわかる写本紙を目視観察と携帯型顕微鏡カメラ写真撮影)と、[2次調査](画像データの解析により、紙に含まれる繊維分析する)、[3次調査](繊維抜き取りによる科学分析)を日本にて行いデータを蓄積し学習用データを更新している。 また、令和1年9月に、ドイツの五大陸博物館(ミュンヘン)と紙の研究に関する新たな学術研究協定を締結した。また、ウズベキスタンの文化財と関係が深い、サンクトペテルスブルクのエルミタージュ美術館及び、国立図書館を訪問し、紙のサンプル調査などの依頼と打ち合わせを行った。 令和1年11月には、本事業に関連した国際セミナー 紙と芸術表現 “ウズベキスタンのサマルカンド紙、イスラーム写本、ミニアチュールを知る”を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画「ウズベキスタンの紙サマルカンド紙の解明Ⅰ」にかかるウズベキスタンでの調査においては、訪問先から貸与した紙の中で特に本年は科学アカデミー東洋学研究所、サマルカンド大学、ウズベキスタン芸術大学の[3次調査]のための紙片(計20点)を科学的検証を行った。当初サマルカンド紙は桑の原料による紙と考えられてきたが、実際の調査では11世紀から15世紀など古いものは麻の繊維が多く、その後は綿が多いことが明らかとなった。またドイツの五大陸博物館の8世紀の中国西方の古墳からの出土である中国紙(計12点)の科学的検証を実施した。この紙片からは、大半は麻であったが桑の繊維が若干出たことから、同時代に同じエリアで桑原料の紙が確認できたことは、サマルカンド紙においても可能性が残るため継続して検証を行う。 [2次調査]に関しては、AIの学習用データベースの増強の為、日本の多くの和紙データを入力し様々な判別を検証中である。特に原料が同じで地域が違うなど、微妙な差がディープラーニングにより検証できるかを継続して実験している。 また本研究の概要と初期の研究成果は、ウズベキスタン文化庁副大臣Kamola B.Akilovaの推薦により、ユネスコの国際会議“UNESCO INTERNATIONAL CONFERENCE Samarkand city, August 26, 2019” に招聘され、サマルカンド紙調査研究及び紙繊維組成分析について発表を行った。 その他、研究メンバーによる成果として、サマルカンド紙の歴史調査のためのAIを用いた紙繊維組成分類として発表し、IEEE Best Poster Awardを受賞した。 さらに、令和元年11月16日、国際セミナー「紙と芸術表現“ウズベキスタンのサマルカンド紙、イスラーム写本、ミニアチュールを知る”」を名古屋にて開催し、本研究に関する発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は「サマルカンド紙の解明Ⅱ」及び「中国及び東洋の紙との同時代分析」を目標に、現地で古い写本紙等の画像撮影と、可能な限り[3次調査]用サンプルを入手し繊維の抜き取り調査を行いたい。また海外の研究協力者が独自に画像を収集し送信できる仕組みを提案、検証し、その活用を推進したい。さらにディープラーニングによる画像解析方法と、これまでの分析結果を検証しデータベースのブラッシュアップを行う。具体的には紙繊維の判別など同種の繊維に関する詳細な判別方法を検証する。 海外調査は、現在の[2次調査]の結果も踏まえ、中国調査(上海、大連、新疆、北京方面 )の実施し、中国紙の具体的な調査などを予定している。ただし新型コロナウイルス等の影響で海外渡航の困難が予想されるため、2021年度の予定であった「トルコ、ロシア及び欧州の紙との同時代分析」を前倒しするなど、調査の安全を考慮し調整したい。トルコ調査では、トプカピ宮殿のイスラム写本などの調査を現在依頼準備している。 サマルカンド紙の解明に関しては、紙と芸術表現の観点から紙に書かれたイスラム美術に焦点をあて、11月にウズベキスタンでの調査及び国際セミナーを実施する予定である。ただし本年度に関しては、海外調査全般に関してかなりの制限が予想されるため実施においては慎重な判断をしたい。 国内での研究においては、引き続きAIの学習用データベースの増強に務めるが、日本の和紙データの解析を中心に判別精度の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
当初3月に予定していたウズベキスタンでの国際セミナーが、新型コロナウイルスの影響により渡航不可となり延期となった。現状の計画では、2020年10月末から11月に開催の予定である。
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Research Products
(10 results)