2020 Fiscal Year Research-status Report
Fostering joint international research in Kazakhstan for studies of the Modern Human migration through the northern route.
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18KK0021
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
国武 貞克 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50511721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
夏木 大吾 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任助教 (60756485)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | カザフスタン / IUP期 / EUP期 / 後期旧石器時代前期 / 石刃石器群 / クズルアウス2遺跡 / ビリョックバスタウ・ブラック1遺跡 / 小石刃 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はカザフスタンにおいて行ってきた野外調査の成果について成果を論文としてまとめることと、放射性炭素年代測定分析を実施して遺跡の年代を決定することと、国際研究集会の成果を出版することの3点を実施した。 まず2018年から発掘調査を実施してきたカラタウ山地のビリョックバスタウ・ブラック1遺跡については、その技術的な特徴と石器組成およびその出土状態などについて英文論文としてまとめてQuarternay International誌に投稿し受理された。中央アジア西部における後期旧石器時代前期(EUP)石器群の特徴である小石刃が卓越するクリブラキアンが、カザフスタン南部にまで広がっている初めての事例として位置づけた。さらに、ビリョックバスタウ・ブラック1遺跡で発掘した小石刃核の型式分類を行い、ウズベキスタンやタジキスタンの同時期の遺跡の出土例と比較したうえで、遺跡名を冠した新しい型式「ビリョックバスタウ・ブラック型小石刃核」を提唱した。 天山山脈北麓で2018年から発掘調査を実施している後期旧石器時代前期(EUP期)のクズルアウス2遺跡については、4枚の文化層で検出した地床炉から採取した木炭の放射性炭素年代分析を30点実施し、3万4000年前から3万1千年前の間という1000年単位で文化層の年代差を求めることが出来た。これにより、EUP期後半の石刃製作技術の変遷を層位と年代値で示すことが出来た。 さらにカザフスタンから古日本列島に至る現生人類の拡散ルートを検討するため2019年11月に開催した第3回中央アジア旧石器研究集会の発表と討論内容について記録集作成し『中央アジア旧石器研究報告第6冊 ユーラシア東半部における後期旧石器時代の開始と展開』として出版した。これは中国河北省の泥河湾遺跡群の西白馬営遺跡の発掘成果をカザフスタン及び九州の後期旧石器文化と比較検討した成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地の野外調査によって、カザフスタンにおける初期後期旧石器時代(IUP期)から後期旧石器時代前期(EUP期)の新資料を把握すること、そしてそれについて年代測定を実施することを目標としてきた。これに対して、2018年と2019年の野外調査によって、IUP期についてはチョーカン・バリハノフ遺跡の発掘調査により新しく8~10文化層を発見し、放射性炭素年代測定により4万年前というIUP期の新資料を把握したこと。そしてEUP期については、クズルアウス2遺跡の発掘調査により、文化層が4枚重複する石刃石器群を検出して、地床炉の炭化物から3万4千年前から3万1千年前という確実な年代値を獲得したこと。これにより、当初目標としていたカザフスタン南部における後期旧石器時代前半期の石刃石器群の変遷を軸にした地域編年が新しく樹立できる見込みが立った。これは5年目の最終年度に達成することを目標していたが、早くも3か年目にあたる2020年度に達成することが出来たためである。さらに、ビリョックバスタウ・ブラック1遺跡の発掘調査成果を国際誌Quaternary International誌に投稿し受理され、中央アジア西部におけるEUP期の新しい文化的な様相について国際誌において成果を公表することとなった。これも3か年目としては想定していなかった成果である。これらから本研究課題は、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、感染状況を見極めながら年代測定分析など日本国内で実施可能な研究を進行させていく。具体的にはIUP期とみられるチョーカン・バリハノフ遺跡の第8~10文化層から採取してきたOSL年代分析試料の光ルミネッセンス分析を進め、放射性炭素年代値との比較を進める。また、ラハット遺跡から採取したOSL試料についても光ルミネッセンス分析を進めて、EUP期前半の年代値が得られるかどうか検討する。また、クズルアウス2遺跡については年代値が放射性炭素年代値とOSL年代値が完全に一致したため、石器群の図化を進めつつ、国際誌への論文投稿を行う。他にこれらの研究成果を広くユーラシア東部の状況と比較する研究も実施する。具体的には古日本列島において石刃石器群として後期旧石器時代初頭の最古の年代値が得られた香坂山遺跡の発掘調査と年代測定分析を行い、カザフスタンの発掘調査で得られた成果と比較しその関係について検討する。 また、カザフスタンにおける共同研究者であるカザフ国立大学やカザフスタン国立博物館と共同で国際研究集会をオンラインで実施し、その成果を出版する。
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Causes of Carryover |
カザフスタン南部の天山山脈北麓におけるクズルアウス2遺跡の発掘調査を9月に予定していたが、日本カザフスタン両国の感染状況が改善せず渡航できなかったため次年度使用額が生じた。2021年度において感染状況を確認しつつ、野外調査が可能な9月までに渡航可能となった段階で使用する予定である。
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Research Products
(13 results)