2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructing of the history of handicrafts in Uzbekistan and the regional development through "tradition" of handicrafts
Project/Area Number |
18KK0022
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
菊田 悠 北海学園大学, 経済学部, 准教授 (30431349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今堀 恵美 東海大学, 文化社会学部, 講師 (50600821)
宗野 ふもと 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (30780522)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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Keywords | 手工芸 / 伝統 / ウズベキスタン / 地域開発 / 職人 / 陶業 / 刺繍業 / 毛織物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウィルスのパンデミックによって、日本側研究者3人ともウズベキスタンに渡航することはできず、現地調査はできなかった。そのため、インターネットを通じてウズベキスタン側研究者らの協力を得つつ、ソビエト連邦時代から現在に至るウズベキスタンの手工芸の変遷に関する資料を比較照合し、これまでに収集した資料の分析と論文作成にあたった。 宗野は、これまでに収集したデータを用いて19世紀半ばから2010年代後半におけるウズベキスタンの手工芸生産の変遷を、カシュカダリヤ州シャフリサブズ市における刺繍及び絨毯生産を事例に分析し、中央アジアの人類学研究において最も権威ある英文雑誌に投稿した。第1稿は査読の後戻ってきており、手直しの上、再投稿する作業の途中である。 今堀は、伝統工芸とテクノロジーの関係を再考するため、ウズベキスタンで用いられてきたミシン刺繍についての研究発表を行った。近年のコンピューターミシンによる刺繍とは異なり、ウズベキスタンで用いられてきたミシン刺繍は、ミシンという機械を用いつつも職人技ともいえるべき品質の差があり、ウズベキスタンで伝統工芸として認定されていることを分析した。現在はこの発表に基づいた草稿を執筆して投稿する準備をしている途中である。 菊田は、フェルガナ州リシトン市における陶器生産に関する論文を、中央アジアの人類学的研究論文集に投稿する依頼を受けて昨年執筆していたが、これを本年度に最終校正して提出した。当初はウズベキスタン国内の主な窯元10か所近くの比較考察の予定であったが、長いフィールドワークに基づく1か所の詳細な記述と分析を求められたため、本年度に根本的に書きなおして査読を通過した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、現地調査が全くできなかったものの、全体としてはおおむね順調に進展したと評価する。その理由は、日本側研究者がこれまでの成果を整理して論文執筆と研究発表に注力できたためである。特に中央アジアの人類学において権威ある英文雑誌に投稿したことは、日本人研究者の業績をアピールする上で効果的であったと思われる。 一方、調査地の手工芸をめぐる状況は、手工芸振興に関する新しい大統領令が出された2017年以降に、現地政府の支援を受けて急激に変化しつつある。本年度はこの急激な変化以前の状況を総括し、2017年以降の状況に関する分析の基盤を整えた年といえる。これらは当研究の目的である「ソ連時代以降の手工芸史の再構築を続け、成果を学会や学術誌に発表する」および「ウズベキスタン手工芸史研究と伝統を巡る研究成果を発表・出版する」にかなう内容である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、新型コロナウィルスのパンデミックによる渡航制限が緩和されつつあるので、各自がウズベキスタン側の研究協力者を訪問し、その協力を得ながらソビエト連邦時代から現在に至るウズベキスタンの陶業をはじめとする手工芸の変遷に関する資料を収集する予定である。また、ウズベキスタン職人組合の協力を得つつ各自のフィールドにおける手工芸の調査を行ないたい。調査の内容は、ソ連時代以降の製品・生産体制・技法の変遷、伝統とされる要素の変遷、伝統に関わる人々の言説、観光業との関係、2017年以降の手工芸振興策の影響等である。 渡航制限の影響が完全になくなった場合は、調査地の職人や共同研究者を日本に招聘してシンポジウムを開催することも予定している。そのための打ち合わせや招聘費用等にも本科研費を支出する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、海外渡航に制限がかかったことによって、計画通りの現地調査ができなかったことが数年続いている。これにより次年度使用額が生じている。次年度はようやく海外渡航の制限がゆるみつつあるので、積極的に現地調査を行ない、調査地の職人の日本への招聘もおこなっていくことを予定している。
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