2019 Fiscal Year Research-status Report
Secured Transactions Law in the East Asian Market
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18KK0035
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 直也 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00202010)
水津 太郎 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (00433730)
鳥山 泰志 東北大学, 法学研究科, 教授 (10432056)
道垣内 弘人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40155619)
平野 裕之 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (80208842)
金 あんに 武蔵野大学, 法学部, 講師 (80823822)
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Project Period (FY) |
2019-02-07 – 2021-03-31
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Keywords | 担保 / 譲渡担保 / UNCITRAL / 公示 / UCC第9編 / 中国法 / 韓国法 / 登記 |
Outline of Annual Research Achievements |
動産及び債権を目的とする担保法制について,日中韓の制度と抱える現状を明らかにした。わが国では,この分野の法制度は,個別動産および集合動産譲渡担保,所有権留保,及び,将来債権譲渡担保に関する判例法の集積によって,形成されている現状がある。また,その過程で明らかになった,債権譲渡の公示制度の非効率や動産非占有担保の公示制度の不存在といった問題意識にこたえるべく,いわゆる動産・債権譲渡特例法が制定されている。しかし,とりわけ動産譲渡担保の公示制度の不全は解決されておらず,むしろ,公示がない担保制度としての定着を見せている状況にあるが,国際的に比較すると,この方向性は非難の対象となりかねない。事実,世界銀行等が公表するランキングにおいて我が国の担保法制の評価は低い。現在,この問題の立法的解決の可能性を探るべく,商事法務研究会において法務省の関与する立法研究会が進められている。このような問題意識は,韓国と中国では,対応関係が異なる。韓国法においては,動産及び債権の担保法制について,わが国の制度とかなり似た前提がある。2010年には「動産・債権等の担保に関する法律」が制定され,公示についても担保登記がなされうる状況にある。また私的実行についても明文規定が置かれている。これは,UNCITRALなど米法の影響を受けた国際水準を意識した側面があり,わが国で現在展開されている立法論と一脈通ずる視点から先行して立法が行われた例であるといえる。中国法においては,物権法において浮動抵当が規定されるなど,一般法の展開もあるが,「金融融資賃貸」(1996年の最高人民法院の制定した規程にはじまり,2006年に「中華人民共和国金融賃貸法」が制定されている)やファクタリングなど,領域ごとの展開が大きく,取引実態を介して国際水準の影響が見られる。いずれも国際水準との関係を視座に含む点が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は9月に,中国韓国から研究者を招いた機会に,本研究テーマについての意見交換を行い,研究代表者及び分担者で検討を重ねた結果,研究の方向性を,日中韓の動産及び債権担保法制度の共通の問題意識となっている国際水準における位相へと展開させることを決め,そのために必要な国際シンポジウムを最終年度である2020年度秋をめどに開催することにし,その準備をなすべく,対象となる,中国,韓国,米国,オーストラリア,ニュージーランドの研究者との打ち合わせを行った。これにより,2020年度のシンポジウムの開催を見込んでいた。以上の点では,本研究の進捗状況は当初の計画以上であるともいえる。しかし,2月頃から顕在化したコロナ禍によって,2020年度の国際シンポジウムの実施は,少なくとも本報告書入力時点で,困難な状況に陥っている。然るべき手続をへて,2021年度への延期を考えざるを得ず,その意味で,やや遅れている状況で,引き続き研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究業績欄記載のとおり,日中韓の動産・債権担保法は,いずれもUNCITRALの担保モデル法等に代表される明文の国際水準や,渉外取引の取引実態を通じて導入された国際水準を前提とした整備に,程度の差こそあれ,一定の問題意識を共有しつつ取り組んでいる現状にあることが明らかにされた。東アジアの金融取引市場の中心を占める日本、中国、韓国について、各国の現行法によって把握される担保価値の内容と地域的取引市場の実態との相関関係を探求するという本研究の目的からは,まさにこの点を基軸に,今後の検討を進めるべきである。そのため,申請時点での具体的な課題としていた、①在庫商品をはじめとする動産の非占有型担保制度、②不動産上の抵当権と競売市場の制度設計の関係、③建物を目的物とする抵当権のうち,①に焦点を絞った研究を行う。また,上記の観点から,日中韓など東アジア域内の議論のみを比較検討するだけでは限度がある。上記の意味での国際水準との関連を制度的に検証している法域,米国やオーストラリア,ニュージーランド,ヨーロッパ諸国を含めた総合的検討を行う必要がある。今後は,これらの方向性に調整を行ったうえで,相互の研究報告や意見交換を行う枠組みを拡大していく。
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Causes of Carryover |
研究の趣旨から,研究の方向性を,日中韓のみならず,UNCITRALや渉外取引にみられる国際水準における位相という観点から,比較対象を,米国やオーストラリア,ニュージーランド等に拡大することを決定し,そのために,国際シンポジウムを開催することを予定するに至った。そのために必要な資金を集約すべく,2019年度における支出を,国際シンポジウムの事前の検討と準備に必要な手配に関わるものに限定した。そのために,次年度使用額が生じている。この資金は,予定通り,国際シンポジウムの開催に使用する予定である。もっとも,コロナ禍との関係で,開催時期は現段階で未定であり,パンデミックの事情によっては,延期が必要になる可能性がある。
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