2020 Fiscal Year Research-status Report
巨大リスクにどのように立ち向かうか? イスラエルとの共同研究
Project/Area Number |
18KK0048
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
筒井 義郎 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (50163845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 英司 西南学院大学, 経済学部, 教授 (20368971)
高阪 勇毅 京都経済短期大学, 経営情報学科, 講師 (60632817)
林 良平 東海大学, 政治経済学部, 講師 (80633544)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | HBM / Covid-19 / イスラエル / ワクチン / 宗教 / 危険回避度 / habituation |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2020年2月以降に発生した新型コロナ感染に立ち向かうために、1月末まで進めていた、地震・軍事リスクに関するアンケート調査を一時停止し、急きょ、日本とイスラエル両国におけるアンケート調査を作成し、3月から6月にかけて調査を実施した。その後、10月からの感染拡大を受けて、再度、調査を実施した。 このアンケート調査にもとづき、多くの論文を執筆し、投稿した。そのなかには、① health belief model(HBM)に基づき、ワクチン接種意思が新型コロナを恐れている程度に依存することを示したものがある。新型コロナを恐れている程度としては、予想感染確率と感染した場合の病状予想を用いた。ただし、ワクチンについては、当時まだなかったので、「仮想ワクチン」があったとしたら、と尋ねている。②新型コロナ拡大に伴い、危険回避度が小さくなっていくものがある。これは、反復して与えられるリスクに対するhabituation (慣れ)として神経科学で著名な反応である。③宗教や信仰の度合いが、ワクチン接種意思に与える影響を分析したものがある。イスラエルがユダヤ教の国であり、日本との比較で興味深い共通点と相違点が明らかになった。その他、③学校の閉鎖が男女の在宅勤務に与えた影響を分析したもの、④オリンピックの延期が飲食業の人に与えた影響を分析したもの、⑤学校閉鎖が児童の親の精神的健康に与えた影響を分析したもの、⑥緊急事態宣言が人々の防御行動に与えた影響をDIDで分析したもの、などが含まれる。 本研究プロジェクトはHBMによるリスク防御モデルが現実の防御行動を説明するかどうかの分析を目的としているが、実際にこのような大きなリスクに直面することにならなかったら、仮想的な質問しか行えず、この問題の解明は難しかったであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染の勃発により、2020年3月よりアンケート調査を前倒して実施し、その分析に精力的に取り組んだ。本研究プロジェクトはhealth belief model(HBM)によるリスク防御モデルが現実の防御行動を説明するかどうかの分析を目的としているが、実際にこのような大きなリスクに直面することにならなかったら、仮想的な質問しか尋ねられず、現実の防御行動を関しての問題の解明は、難しかったであろう。また、研究計画では、イスラエルでは軍事リスク、日本では地震リスクに関する質問を想定しており、異なるリスクを比較することには一定の困難が予想される。新型コロナ感染では両国が同一の問題に直面する一方、両国の政策・防御行動には大きな隔たりがある。たとえば、イスラエルは世界に先駆けて2020年12月にワクチン接種を開始し、その接種率は世界1で、現時点ではすでに6割の国民が2回の接種を完了している。その結果、1日の感染者数は100人以下になり、国民には大きな安堵感が広まっている。一方、日本では2回の接種率は1%に満たず、国民は3回目の緊急事態宣言の中、今後のさらなる事態悪化におびえている。両国のデータ収集から、本プロジェクトは多くの事実を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染に関するアンケート調査の結果を分析した論文をさらに執筆する。現在、進行中の研究は①新型コロナ感染の信仰による幸福度の変化、②感染防御対策がHBMモデルで説明できるかどうかの分析、③イスラエルではすでにワクチン接種の効果が明確になっているが、ワクチン接種が人々の将来予想にどのような影響を与えたか、などである。このうち、②は本研究計画と最も密接な関係があるが、現在のところ意外な結果が得られており、合理的な決定を想定するHBMの理論的拡充の必要性を示唆するようで興味深い。 今後は、両国の政策の違いが何に由来するかについても分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題は、新型コロナ感染の拡大に応じてアンケート調査を適切に実施することを計画していたが、当初予想より感染拡大が2021年度に広がる事態が予想されるに至ったため、来年度のアンケート調査に費用をとり置くこととした。 来年度に、アンケート調査に大部分の額を使用する予定である。
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Research Products
(10 results)