2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Analysis on Impacts of the Second Thai-Lao Friendship Bridge on Household in Thailand
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18KK0050
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
早川 和伸 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済地理研究グループ, 主任研究員 (40458948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Keola Souknilanh 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター経済地理研究グループ, 研究員 (10450553)
山ノ内 健太 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 助教 (60804333)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 国際インフラ / ラオス / タイ / 家計調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、タイとラオスを結ぶ第二メコン友好橋を対象として、この橋の設置がタイの家計に与えた影響を分析している。タイの家計調査の個票データを用いた統計的分析とヒアリング調査を組み合わせ、現実との乖離を防ぎながら分析を進めている。2019年度には分析も終わり、第一稿を完成させた。そこでは、友好橋の所得等に対する影響は、家長が男女いずれか、また年齢に応じて異なることが明らかとなった。とくに若い男性が家長の場合、農業生産の拡大を通じて所得を増加させていることが分かった。 2019年度には、こうしたメインの分析に加え、付随的な分析も進めた。第一に、同様の分析をラオスの家計調査を用いて始めた。特に、所得や消費といった基本的な項目だけでなく、医療関係の質問項目に焦点を当てて試験的な分析を行っている。その結果、第二友好橋に近いラオスの家計では、橋の開通後に外国の病院への通院が増加したことが明らかになった。第二に、政府統計を用いて、友好橋が貿易や交通量を大きく増加させていることを確認した。第三に、昼間の衛星画像から生成された空間的に高精細なリモートセンシングデータである土地被覆データを用いて、橋に隣接する地域、または完全道路沿など橋からアクセスが比較的に容易な地域では、自然な森林面積が減少し、人工な耕地や都市部面積が増加した傾向が確認できた。第四に、夜間に撮影された人工衛星画像から生成された夜間光を用いて郡レベルの経済成長を分析し、ラオス側では橋からの距離が経済成長と反比例な関係を持っていること、タイ側でははっきりした傾向が見られないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は、1本のメイン論文が完成し、Discussion Paperとして公表するよう、準備を進めているところである。また、付随した研究も4本進んでおり、順調に進んでいると言える。ただし、2019年度末より海外への渡航規制が始まったため、計画していた研究報告の機会が複数、失われた。そのため外部での研究報告ができない状態が続いており、今後、どのように論文に対するコメントを収集し、論文の質を改善させていくかが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、まずメインの論文を何らかの方法(ウェブ会議など)を用いて報告し、コメントの収集に励む。それをもとに修正を加え、年度内に国際的な学術誌への投稿を行う。また、付随して行っている4つの研究についても、引き続き分析を進めるとともに、執筆作業も行い、年度内にDiscussion Paperとして刊行する。例えば、ラオスの家計調査を用いた研究では、分析結果の頑健性を確認しつつ、主観的な健康度などの質問項目を用いた追加的な分析を行う予定である。これら4つの研究についても、2021年度に国際的な学術誌に投稿できるよう、作業を進める。
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Causes of Carryover |
多くの次年度使用額が生じたのは、海外渡航規制により、年度末に予定していた海外出張が複数キャンセルとなったためである。既に研究報告を行うことがメインの段階となっているため、このまま渡航規制が続くとプロジェクト遂行に支障が生まれる。年度半ばまで様子を見つつ、その後の情勢の変化に応じて対応していきたい。
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