2019 Fiscal Year Research-status Report
In between Global Sex Work and Trafficking: from In-depth Interviews and Network Analysis
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18KK0056
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青山 薫 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (70536581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 文子 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (80555243)
熊田 陽子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (60830346)
大野 聖良 お茶の水女子大学, リーダーシップ養成教育研究センター, 講師(研究機関研究員) (20725915)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | 当事者参加 / 言説分析 / 参与観察 / データ収集 / セックスワーク研究 / 在留資格 / 移住者の不可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
全体としては次の研究活動を行った。1)4月末から5月、中心的協力機関である英国ケンブリッジ大学、およびエセックス大学とサセックス大学で、それぞれワークショップを開催。先行研究についての理解および調査方法論を共有した。2)9月に神戸大学で、アジアの分担・協力研究者を中心に、研究会及び講演会を開催。各自の研究・進捗状況を共有し、日本における調査協力者からの情報提供を得た。 研究代表者・分担者はそれぞれ次の研究実績を上げた。1)イギリスについて、警察の捜査情報を利用した人身取引ネットワークに関する先行研究に学んだ。他国では同様のデータを得ることが困難なため裁判記録やSNS通信記録を利用する方法を検討する案を得た。他方、協力者が増え、それぞれが孤立して行っている調査を、今回の国際共同研究によって統合する方向も提案された。2)タイについては、先行研究レビューが完了し、聞き取り対象者を得るためのアウトリーチを開始した。3)オランダについては、アムステルダムにおける移住セックスワーカーに対する参与観察を開始した。4)日本については、「興行」や風俗産業界に関する歴史をはじめとした先行研究の収集および整理を行う一方、国際政治学上の「安全保障化」議論を用いて、人身取引とこれに対する女性の脆弱性および対策の枠組みについて考察し、部分的に明らかにした。また、現在移住セックスワーカーを雇っているチェーン店舗の経営者に接触し、研究協力を得ることになった。5)フィリピンについては、在留資格「興行」やフィリピン人移住女性についての言説を収集し、データベース化を開始した。5)中国出身者については、日本(大阪)において1人のセックスワーカー当事者にパイロットインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まず、完了する予定であった関係各国・地域・イシュー・方法論においての先行研究レビューが、タイ以外ではまだ終わっていない。第一の理由は、代表者が忌引きのため4-5月のワークショップに参加できず、全体での研究計画・予定のすり合わせが不徹底になったことである。その後分担者間を中心に何度かウェブ会議などを行って、改善しつつあるが、質的研究の性質および第二第三言語を介した国際共同研究の性質にも関わって、対面で議論ができないと共同研究・調査の進行は難しい。 次に、すべての関係国において、協力研究者との共同調査を開始する以前に実務上の困難があり、これを克服しようという段階にある。具体的には、オランダとタイの場合、先方の各所属機関の規則と日本側の規則等による謝金等の支払い形態が折り合わず、このままでは調査に取りかかることができない。とうぜん協力者は全員事前に本研究の意義、目的、方法に賛同しているが、実務上のバリアは想定していなかったのである。イギリス、フィリピン、そして中国出身者については、中心となる協力研究者が大学内で役職に就くなどして多忙を極め、十分な時間をとることができない問題が大きい。代表研究者の立場もこれに近かったことも災いした。 以上を改善すべく、年度末に代表者・分担者・アシスタントが協力機関・現地へ出張する予定だったが、新型コロナ渦ですべて中止になった。このことも遅れの大きな原因である。 一方、代表者と分担者は各自・各所でできる限りの研究を進めており、全体の予定通りとはいかないものの、この点では上記のとおり十二分な成果があがっている。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究レビューについては、不可欠でありオーソドックスな手法を取る他ないので、もう一度時間を区切って完了する。ついては、各地・各イシューについてアシスタントの力を借りるよう促す。理論・方法論研究、言説研究は、常に他の調査研究と並行して進め、とくに、社会学と政治学に通底するネットワーク分析の理論化・体系化を試みる。 現地調査については次のように対処して進める。オランダでは大学等機関を介さず、日本から直接謝金の支払等ができる協力者・大学機関に所属しない協力者の役割を強め、その必要に応じてアウトリーチの対象・地域などを変える。タイについては、やはり直接日本から業務委託できる形を増やしつつ、先方協力研究者ほかとの交渉を進める。イギリスについては、ネットワーク分析に関する研究協力の中心であるケンブリッジ大学の研究者は変わらず、その他の協力研究者に依頼して、実際に共同調査を行うことができる協力研究者・研究者を増やす。フィリピンについては、日本におけるフィリピン研究者の協力も得ながら、同様に現地協力体制を拡大する。日本については、本年度に協力の約束を得た性風俗店経営者とセックスワーク当事者から、引き続き情報を得る。 ただし、新型コロナの影響は引き続き深刻であることが予想される。海外との行き来がいつ再開されるのか、再開されても関係者の安全を確保しつつ調査ができるのか、どのようにできるのかによって、本研究の今後の方向は大きく変わる。さらに、こういった具体的な問題と対処法以前に、研究の主題自体――移住性労働と性風俗産業にかかわる人身取引――が、新型コロナ自体と対策としての人の移動の不自由化によって大きく変化しているだろうことを考えなければならない。つまり、本研究はおそらくかなりの方向転換に備えなければならず、客観状況に左右されながらこの方向性を見出すことが次年度の課題の一つになるだろう。
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Causes of Carryover |
【現在までの進捗状況】に明記した通り、新型コロナ渦の影響で年度末に予定した海外出張がすべて中止になったため。
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Research Products
(25 results)