2018 Fiscal Year Research-status Report
Beyond misconceptualizations of cognitive resources: An international collaborative study in psychological science
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18KK0069
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 愛子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (20403909)
源 健宏 島根大学, 学術研究院人間科学系, 准教授 (40611306)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 認知リソース / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
認知リソースは、心の働きを支えるエネルギー源であるとされる。この概念が重視されるのは、それが、行動の制御や感情の調整と深くかかわり、人間の知的活動を根本から支え、したがって、社会生活のさまざまな場面で大きな影響を持つと考えられているからである。本研究は、国際共同研究を通じて、 (1)認知リソースについて、心的エネルギーの同語反復のような定義ではなく、明確な概念化と操作的定義を提案し、(2)複数の課題を同時に行う際に生じる課題成績の低下について理論的な説明を提供することを学術上の目的とする。科学的検証方法として、多国籍実験室パラダイムを使用し、既存の認知リソース概念とは全く異なる発想に基づく「認知リソースのワーキングメモリ理論」を提案する。このモデルは、ワーキングメモリの多要素モデルと時分割型リソース共有モデルを理論的に統合し、認知リソース概念に適用しようとするものである。研究チームは、日本を中心に、マレーシア、英国、そしてスイスの研究者から構成されており、実験結果の再現性を複数国で確認することで、「処理時間とワーキングメモリにおける忘却速度の相互作用」という仮定を科学的に検証していく。2018年度は、研究プロジェクト開始年度で、実質的には半年以下の期間で活動を行なったが、主として次年度以降に開始する実験に関する準備調整に注力した。特に、マレーシア、英国、そしてスイスにおいては、それぞれ独自の事情があり、予算の管理、リサーチアシスタントの位置付けや雇用、実験参加者のリクルートと謝礼の支払いなど、1つ1つ確認する必要があった。こうした国際共同研究の基盤ともなる枠組みの構築に時間を要することとなったが、全体として、次年度以降の実験の実施に向けて準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、国際共同研究を通じて、新しい認知リソース概念を提案することを目的としている。これまで曖昧にしか定義されてこなかった認知リソースを捉え直し、時分割処理という明確なメカニズムのもとで生じる、処理時間とワーキングメモリにおける忘却速度の相互作用によってこの概念を操作的に定義し、認知リソースのワーキングメモリモデルを構築することを目指す。この目的を達成するために、2つのワーキングメモリモデルを統合する。第一のモデルは、エディンバラ大学のRobert H. Logieによるワーキングメモリの多要素モデルである。このモデルを用いることで、忘却度の側面を検討する。第二のモデルは、ジュネーヴ大学のPierre N. Barrouilletとフリブール大学のValerie Camosによって提唱された時分割型リソース共有モデルである。このモデルは、情報の処理と情報の保持が時分割処理により認知リソースを共有するということを想定しており、時分割処理のメカニズムの検討に優れている。2018年度には、マレーシア、英国、そしてスイスの海外共同研究者が所属するマレーシア科学大学、エディンバラ大学、ジュネーブ大学およびフリブール大学における、予算管理の方法、実験実施のための送金手続きや必要な契約書その他を、海外共同研究者と連携して確認、調整し準備を行なった。日本側では、日本人共同研究者との合同ミーティングを開催して、情報を共有するとともに、次年度以降の研究計画と渡航計画を確認した。また、海外拠点の1つであるマレーシア科学大学を訪問して、実験設備の確認および同大学における倫理審査過程の把握を行なった。本研究は、以上のように、研究計画に沿って順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の早い段階で、代表者、分担者を含む、7人の共同研究者で集まり、グループミーティングを行って、プロジェクトの内容、役割分担、予算の使用方法等について、確認と調整を行う。このミーティングは日本で行うため、海外研究協力者である、Robert H. Logie, Pierre Barrouillet, Valerie Camos, Weng Tink Chooiを招聘する。あわせて、日本国内において、予備的な実験を実施し、海外研究拠点での実験実施に備える。準備の完了した国から実験を開始する。その際、日本人研究者が海外研究機関に滞在して実験を開始し、その後、現地の研究協力者および研究補助者に引き継いで実験を継続する。英国エディンバラ大学での実験は、Logieの協力のもと、分担者の森田と代表者の齊藤が、スイス・ジュネーヴ大学およびフリブール大学での実験は、BarrouilletおよびCamosの協力のもと、分担者の源と代表者の齊藤が、マレーシアのマレーシア科学大学での実験は、Chooiの協力のもと、分担者の森田と代表者の齊藤が担当し、日本国内では広島大学と島根大学において実験を実施する。なお、各国の研究拠点大学において研究倫理審査を受ける必要があるため、その準備および審査の期間を考慮し、実験の開始が2019年8月頃になるものと見込んでいる。2020年度には、引き続き4カ国にて実験を継続するが、新たな実験を実施するに際しては、代表者および分担者が海外研究拠点に一定期間滞在して実験の準備と開始を担う。2020年度の後半から実験データのレヴューを開始し、必要に応じて、2021年度の前半に補足的な実験を、必要な国において実施する。2021年度には、研究成果をとりまとめて国際会議にて報告するとともに論文化し、国際誌への出版を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初、2018年度中に3カ国を訪問する予定であったが、実質的な活動期間が半年未満となったこともあり、担当者の学内業務の関係で、1カ国のみの訪問となった。そのため、予定していた旅費が未使用となったが、次年度には、その旅費も使用することで、比較的長く海外の拠点大学に滞在し、実験を実施する計画である。
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Research Products
(3 results)