2018 Fiscal Year Research-status Report
Structure of behavior: comparative cognitive neurobiological approach
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18KK0070
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
兎田 幸司 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (60794948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 勝康 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (70507920)
橘 吉寿 神戸大学, 医学研究科, 講師 (50373197)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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Keywords | 時間 / 報酬 / 予測 / オプトジェネティクス / カルシウムイメージング / 古典的条件づけ / オペラント条件づけ / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで心理学では、数秒から数分の時間認識について研究が行われ、時間に関する仮説が積み重ねられてきた (Buhusi & Meck, 2005)。しかしながら、動物の時間認識を検証するために用いられてきた従来のオペラント条件づけ手続きは、訓練に長期間を要し、動物が課題中に自由に行動できるために時間認識と行動表出の側面が混同されるといった問題点を包含していた (Machado & Keen, 1999)。この問題を解決するため、申請者は近年、動物の時間認識を効果的に調べる画期的な手法を開発した 。頭部固定されたマウスを用い、リッキング(舐める行為)を反応として利用することで、身体運動の要因をできる限り排除し、試行ごとの動物の主観的な時間認識の開始と終了のタイミングを計算理論によって切り出すことに成功した。数ヶ月以上の訓練を要した従来のオペラント課題に比べ、本課題では、1-2週間の訓練によって、マウスの時間認識を検出することができる。 今回の研究計画においては、新しい行動実験系を主軸に据えて、行動の出力として直接的な運動制御を担っている皮質下の領域から、認知機能を担っていると考えられる大脳皮質へと投射元を辿っていくことによって、「運動」と、「時間」の認知情報を処理している神経生物学的基盤を分離し、時間情報が生成される過程について明らかにすることを目的としている。 本年度は、頭部固定と自由行動下の両方における古典的条件づけ課題の装置を整備し、実験を軌道に乗せた。これまでに、画像解析を用いた自由行動下での動物の行動の自動分類に成功している。また、オプトジェネティクス、ケモジェネティクス、カルシウムイメージングといった神経活動の操作と計測を可能とするオプシンを、標的の神経細胞に発現させることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、頭部固定と自由行動下の両方における古典的条件づけ課題の装置を整備し、実験を軌道に乗せている。今年度の特筆すべき成果としては、画像解析を用いた自由行動下でのラットの行動の自動分類に成功しており、その成果は、2019年度の日本動物心理学会にて発表予定である。オプトジェネティクスやケモジェネティクス、カルシウムイメージングといった技術に関しては、動物倫理委員会および遺伝子組換え実験委員会の承認を受け、入手したAAVウイルスを用いて、標的部位に遺伝子改変を引き起こすことに成功している。アメリカ・デューク大学との国際共同研究としての成果は、現在、Cell誌に共著論文を投稿中であり、他の論文も執筆中である。また、国内の共同研究については、神戸大学の橘吉寿博士、筑波大学の櫻井勝康博士と連携して、研究代表者からは行動実験のノウハウや分析技術を提供しながら、橘博士からは脳定位固定手術についての情報提供を、櫻井博士からはウイルスや分子生物学に関する情報提供を受けており、相補的な関係で研究を進めている。こうした進捗状況から、本研究課題の進捗状況に関しては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、画像解析による行動の自動分類技術を、実験心理学的な課題、および神経生物学的な操作・計測技術と融合させていくことによって、行動の心理学的・神経生物学的なメカニズムについての解明を進めていくだけではなく、心理学・神経科学の新しい地平線を切り開いていくことができると考えている。特定の神経細胞にCreを発現したマウスやラットを新しく導入していくことで、細胞種とその入出力経路を選択的に同定し、行動と特定の細胞種・経路の関係について明らかにしていく予定である。解剖や組織染色に関しては、顕微鏡周りの整備が必要であり、次年度以降はそうした解剖・免疫組織科学方面の整備も研究と並行して進めていく。アメリカ・デューク大学との国際共同研究としての成果は、現在、Cell誌に投稿中であり、他に準備中の数本の論文も準備している。また、国内の共同研究については、神戸大学の橘吉寿博士、筑波大学の櫻井勝康博士と連携して研究を進めている。行動の分析技術などを提供しながら、橘博士からは脳定位固定手術技術についての情報提供を、櫻井博士からはウイルスや分子生物学に関する情報提供を受けており、相補的な関係で研究を進めており、今後は、こうした共同研究としての成果も期待できると考えている。
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Causes of Carryover |
共同研究者の年度の合間の発注事情により、次年度使用額が生じた。本報告書執筆時点において、すでに、前年度に使用予定だった金額は使用済みであり、微妙なタイミングの問題であった。
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Research Products
(2 results)