2018 Fiscal Year Research-status Report
Optimizing the XENON Dark Matter sensitivity with Kamioka expertise
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18KK0082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹田 敦 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40401286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MARTENS Kai 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (20535025)
風間 慎吾 名古屋大学, 高等研究院(現), 特任助教 (40736592)
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50313044)
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Project Period (FY) |
2019-02-07 – 2021-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 中性子バックグラウンド / 反同時計測 / 水チェレンコフ / ガドリニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イタリア・グランサッソ国立研究所で建設中の暗黒物質直接探索を目的とした大質量2相型液体キセノン検出器(XENONnT)の感度を向上させるために中性子バックグラウンドを約1桁低減可能な中性子反同時カウンターを導入し、世界最高感度で暗黒物質を探索することを目的としている。 2018年度は、中性子カウンターのバックグラウンド除去効率が Geant4 をベースとしたシミュレーションによって詳細に研究された。その結果、当初使用が計画されていた液体シンチレータ型ではなく、XENONnTの中枢検出器チェンバー部分を不感層を最小に取り囲むことで、より高効率に中性子バックグラウンドが低減可能な水チェレンコフ型が優れていることが明らかになった。また、XENONnTコラボレーション内において、中性子カウンターを水チェレンコフ型にすることが承認された。これは、環境放射線シールド用の水タンク内に硫酸ガドリニウム化合物を 0.2% 溶かすことでガドリニウムに中性子が捕獲され、続いて放出されるガンマ線によりコンプトン散乱された電子が出すチェレンコフ光を光電子増倍管でとらえるというもので、本研究申請者らを含むグループが神岡で長年研究してきた技術を最大限に活かす事を可能とし、本研究の主旨にもより合致するものとなった。 中性子カウンターの実現に向けて、新たに導入される光電子増倍管の性能評価試験、光電子増倍管の性能低下を防ぐために必要な地磁気シールドフィルムやチェレンコフ光の輸送効率を高める反射材を設置するための手法を確立するための議論、反射材中に微量に含まれる放射性不純物量測定の準備などが、イタリア・グランサッソ国立研究所で行われ、その際に本研究費によって現地への旅費が適切に使用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に計画されていた主な事項は、シミュレーションによる中性子カウンターの最適デザインの決定および構築に必要となる機材の調達であったが、いずれも順調に達成された。 最適デザインの決定においては、イタリア・ドイツ等のメンバーと毎週テレコム会議を重ねながらシミュレーションによる最適化を遂行し、当初予定されていた液体シンチレータ型よりも高い安全性と運用性をもち、より低コストな水チェレンコフ型が、液体シンチレータ型と同等もしくはそれ以上の高い中性子除去効率を有することを明らかにした。これにより、本研究によって推進された水チェレンコフ型中性子カウンターが、XENONnT コラボレーション内での採用承認を得るに至った。神岡で長年研究が進められてきたガドリニウムによる水チェレンコフ型中性子カウンター技術の暗黒物質探索用検出器への初の応用となり、国際共同によるお互いのフィードバックによるこの技術のさらなる発展が期待されることとなった。 中性子カウンターの構築に関しては、ガドリニウムを含む水の純化装置の実現に必要となるフィルター群や温度・密度・pH・流速等をモニターするセンサー類の選択が進められ、デザインの最適化が行われた。また、高い中性子除去効率の達成に不可欠な反射材の選定や、中性子カウンターを構築する部材がガドリニウム水の質を低下させないことの確認試験等を行った。イタリア・ドイツのグループによって光電子増倍管の調達も予定通り順調に進められた。 また、イタリア・グランサッソ国立研究所において、純水装置デザインの最適化のための議論および中性子カウンターに使用される光電子増倍管のテスト試験のための打合わせが実施された。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、XENONnT建設完了に向けてイタリア・グランサッソ国立研究所における中性子カウンターの設置作業、キャリブレーション、安定運用の実施を行い、XENONnT実験開始後に取得されたデータの解析、中性子バックグラウンドの同定除去を行うことで暗黒物質探索を開始する予定である。 中性子カウンターの設置作業は、光電子増倍管の現地試験と支持構造への取付け、反射材の設置が主な内容である。その他、水タンク内に存在する部材、特にステンレススチール製のXENONnT検出器チェンバーの一部や配管表面に存在することが確認されている錆を除去し、表面を不動態化する作業を行う。これは、ガドリニウム水溶液中に溶けだした鉄イオン等が光電子増倍管に感度のある波長のチェレンコフ光に対する透過率を低下させないためである。 設置後は、あらかじめタンク内に準備されるガイドパイプに沿って中性子線源を水タンク内に導入し、中性子カウンターの性能を評価するキャリブレーション作業を行う。また、純水システムにつけられる各種センサーの値からシステムが安定に運用されていることを常時モニターし、トラブル発生時の対策を確立させ、安定運用に努める。現地における定期メンテナンスも必要である。 XENONnT検出器が暗黒物質探索データを取得するとともにデータの解析を行い、中性子カウンターによるデータと合わせることで中性子バックグラウンドの同定を行う。XENONnT検出器本体および中性子カウンターのキャリブレーションデータをもとにチューンされたシミュレーションによる検出器応答の詳細理解をベースに、世界最高感度での暗黒物質探索を遂行する。
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Causes of Carryover |
本研究の研究費交付開始が2019年2月であったことに合わせて、2018年度内に予定されていたイタリア・国立研究所での現地作業の一部が2019年度初頭に行われることになった。ただし、そのために必要なシミュレーションやデータ収集システムのソフトウェア開発等は国内での作業を中心に進められたため、プロジェクト全体の進捗を遅らせることなく予定通りの推移が期待できる。 2019年度は、中性子カウンターを構成する光電子増倍管の動作試験・設置、反射材の設置、システム全体のキャリブレーション、水タンク内部の浄化、純水システムの設置・安定運用の実現などの現地作業を中心に行う予定である。
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Research Products
(8 results)