2019 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the formation of relativistic jets in supermassive black holes using global VLBI networks
Project/Area Number |
18KK0090
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
秦 和弘 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (60724458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田崎 文得 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 特任研究員 (10800609)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 電波天文学 / VLBI / ブラックホール / ジェット / 活動銀河核 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大ブラックホール(BH)から噴出する相対論的ジェットの生成・加速機構の解明は天文学における究極的課題の1つである。本研究ではM87など重要BH天体を対象に、1mm国際VLBI(EHT)による根元の観測と、欧州まで拡張した東アジアVLBI(EATING VLBI)による下流の高頻度モニターを組合わせ、ジェット加速領域の観測的解明及び駆動理論の検証を試みる。 本年度は数多くの活動を行なった1年となった。まず2019年4月には、本研究に先立ち2017年に取得していたM87のEHTデータについて、BHシャドー撮影論文を出版した(EHT Collaboration et al. 2019)。秦・田崎は国際チーム主要メンバーとして貢献し、スパースモデリングはBH画像の復元手法の1つとして採用された。本成果は記者発表を行い、研究者のみならず広く一般社会にも大きな反響をもたらし、秦・田崎とも数多くの招待講演を行なった。またEHTとして基礎物理学ブレイクスルー賞も受賞した。 EATING VLBIについては、2019年1月から開始したM87のモニター観測を6月までに計8回、更に12月から2020年3月にも6回実施した。秦は4月と11月に各3週間程度ボローニャに滞在し、Giovannini氏らとともにデータ分析を一部進め、ジェットが運動する様子が少しずつ捉えられ始めている。4月の滞在時には国際研究会EATING VLBI Workshop 2019を開催し、本研究の現状報告及び今後の方針を議論した。また秦は上海・新疆天文台にも滞在し、Shen教授らとともにEATING VLBIデータの天馬局、ウルムチ局のデータ解析に取り組んだ。 一方田崎は7月にドイツ、12月にはハワイにて行われたEHT関係者が集うbusy weekに参加し、M87 BH周辺の動画や磁場構造に関する分析を集中的に推し進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目玉として当初予定していた2019年4月のEHTキャンペーン観測は中止になったものの、2017年に観測したM87 EHTの撮影結果をまとめることができたのは非常に大きな進展であった。というのも、現在東アジア+イタリアで進めているEATING VLBIモニターデータと、2017年のEHT撮影結果を比較することで、完全同時データではないものの、引き続き本研究の目的であるBHから外側へのジェットの加速機構の探査が可能になるからである。 EATING VLBI観測については、2019年1月から開始したM87のモニター観測を6月までに計8回、更に2019年12月から2020年3月にも6回実施した。秦は4月と11月に各3週間程度ボローニャに滞在し、Giovannini氏らとともに一部のデータ分析を進め、現在ではジェットがおよそ光速と同程度で運動する様子が少しずつ捉えられ始めている。ただ、運動速度の定量的評価には更にデータを蓄積する必要がある。2019年4月の滞在時にはEATING VLBI Workshop 2019を開催し、本研究の現状報告及び今後の方針を関係者と議論した。 また秦は、上海天文台および新疆天文台にもそれぞれ2週間程度滞在し、Shen教授(上海)やLiu教授(新疆)らとともにEATING VLBIデータの天馬局、ウルムチ局のデータについて詳細な分析を進めるとともに、今後更に合同観測や研究協力を強化していく方針で一致した。 一方田崎はEHT画像解析の国際コアメンバーとして、7月にドイツボン、12月にはハワイヒロにて行われたEHT関係者によるデータ解析busy weekに参加し、M87 BH周辺の動画や磁場構造に関する分析に集中的に取り組み、2017年画像分析のさらなるアップデートを行なった。 以上の理由を総合的に判断し、本研究全体としては順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年から行なっているM87のEATING VLBI観測は順調に進んでいることから、2020年度は引き続きモニター観測の継続と、観測済みデータについてはその分析が最重要課題になるだろう。特にブラックホールから数100シュバルツシルト半径以内におけるジェット速度・加速度の決定し、理論モデルと比較をスタートする準備を整えたい(秦担当)。M87 EHTデータについては2017年データは既に出版済みだが、可能であれば2018年のデータも分析に着手し、ブラックホール最近傍における運動や磁場の様子を捉えたい(田崎担当)。
一方本研究は国際共同研究であり、2020年4月現在、新型コロナウイルスの世界的流行の終息が見えていないことは本研究を進める上で不安材料である。特に本研究はイタリア、中国、韓国、米国に滞在して現地共同研究者とともに研究を進めることが本来メインであるが、これらの国はいずれもウイルス感染が最も深刻な地域であるため、今年度中に渡航可能か現時点で見通しが立っていない。そこで当面はオンライン会議ツールなどを利用して共同作業が可能な部分から進めていく。もし年度後半に渡航が可能になった場合には、秦はボローニャIRA、上海・新疆天文台に滞在してEATING VLBIデータを、田崎は米国CfAまたはヘイスタック研究所等に滞在してEHTデータの分析を現地共同研究者と集中的に推し進めていく。
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Causes of Carryover |
令和元年度におけるイタリア電波天文学研究所への滞在期間が当初の予定より10日程度短くなったため。次年度使用額は改めて滞在費に使用する予定である。
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Research Products
(25 results)