2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation and Control of Wall Effects on Cool Flame
Project/Area Number |
18KK0106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雄二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80222066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
范 勇 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40748662)
齋木 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60550499)
李 敏赫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (80828426)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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Keywords | 冷炎 / 低温酸化反応 / レーザー誘起蛍光法 / 表面反応 / 壁面の化学的干渉効果 / DME |
Outline of Annual Research Achievements |
内燃機関において,冷炎は本着火(熱炎)のタイミングに大きな影響を与え,ノッキングに大きく影響する.また,条件によっては熱炎よりも可燃範囲が広く,防災など安全性などの面からも重要と考えらえている.しかし,冷炎を支配する低温酸化反応に関する定量的な情報は不足しており,従来提案されている反応モデルについても不確かさが大きい.また,壁面は流体力学的・熱的な境界条件により燃焼場に影響を及ぼしているが,同時に壁面における表面反応も大きな影響因子である.申請者らは,ごく最近,熱炎,冷炎において,壁面材質によって火炎温度やラジカル・中間生成物質の濃度が大きな影響を受けることを明らかにした.特に,冷炎における壁面の化学的効果は単純なラジカル破壊ではなく,表面反応と気相反応が絡み合って複雑な現象を呈している.本研究では,国際共同研究先のプリンストン大学Yiguang Ju教授のグループの保有する実験・計測技術と,申請者らがごく最近構築した壁面で安定化される冷炎での計測,詳細数値解析を組み合わせることによって,新しい低温酸化反応モデルの提案と,冷炎に対する表面反応モデルの構築を行うことを目的としている. 初年度は,DME/酸素の予混合火炎を加熱平面に衝突させることによって安定化される冷炎について,数値解析およびHCHO-LIF計測による検討を行った.そして,壁温を一定速度で上昇させてHCHO濃度が不連続的に上昇する温度を着火温度と定義し,従来の研究で得られた値と大きな違いがないことを示した.また,壁面の材質によって,着火温度が大きく異なることを初めて示し,Feでは着火抑制,Ptでは着火促進となることを明らかにした. プリンストン大学Ju教授を2019年3月に訪問し,実験結果について詳細な議論を行って,共著の国際会議論文としてまとめ,2019年7月に発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DME/酸素の予混合火炎を加熱平面に衝突させることによって安定化される冷炎について,数値解析およびHCHO-LIF計測による検討を行い,壁温を一定速度で上昇させてHCHO濃度が不連続的に上昇する温度を着火温度と定義し,従来の研究で得られた値と大きな違いがないことを示した.数値解析から,この不連続的な温度上昇はいわゆるSカーブの特性によるものであり,ヒステリシスが生じることによって,着火温度と消炎温度が異なることが原因であることが明らかになった.さらに,壁面の材質によって,着火温度が大きく異なることを初めて示し,Feでは着火抑制,Ptでは着火促進となることを明らかにした.これらの結果は,冷炎の着火特性について新しい知見を与えるものであり,初年度として計画していた内容を越える成果が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年3月に研究分担者とともに,国際共同研究先であるプリンストン大学Yiguang Ju教授を訪問し,今後の進め方について詳細に議論を行った.その結果,壁面で安定化された冷炎の着火温度についての議論がこれまでなされていなかった新しい結果であること,壁面の温度境界条件を保ったまま化学的境界条件を変えた場合に大きく着火温度が変化することも極めて新しい知見である,という認識で一致し,次年度についても,この方向で研究を続けていくこととした. また,HCHOなどの計測に,量子カスケードレーザーを用いた吸収スペクトル計測が有効であり,プリンストン大学で行っている計測システムについて議論を行って,東京大学においても同様の装置を導入することとした. なお,冷炎の挙動には圧力の影響が大きいことが知られており,高圧条件下での計測を行う予定としていた.当初は,プリンストン大学の高圧チャンバを使用する予定であったが,今回の訪問時に検討した結果,必ずしも今回の目的に適した構造でないことが判った.そのため,今後,プリンストン大学と共同で新しいタイプの高圧下での実験系について双方で協力して検討していくこととなった.
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Research Products
(7 results)