2019 Fiscal Year Research-status Report
Electron Microscopy Analysis for Materials Interfaces –Development and Applications of Multidisciplinary Quantification Techniques for Atomic Structures and Electromagnetic Properties
Project/Area Number |
18KK0134
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 圭介 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (20706387)
村上 恭和 九州大学, 工学研究院, 教授 (30281992)
西田 稔 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (90183540)
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2021-03-31
|
Keywords | 界面構造 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,主にマルチフェロイック酸化物の走査電子顕微鏡(SEM)観察技法の確立に向けた研究を実施した.本研究課題で新たに導入した走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて,SEMとSPMで対応を取ることでSEM観察で得られたコントラストに対する評価を試みた.対象とする酸化物については前年度に引き続き,YMnO3および(Ca,Sr)3Ti2O7を選択した.SEM観察においては重要な進展が得られた.YMnO3の強誘電ドメインコントラストは各種観察条件によって大きく変化し,特定条件下において明瞭なコントラストが得られることが明らかとなった.またこの観察法を適用することによって,YMnO3単結晶内部に不均一なドメイン分布が存在することが明らかとなった.一部領域ではドメインの電子線照射による経時変化も観察され,電子線によるドメイン操作などの可能性を示唆する結果が得られた.以上の結果は,本研究で初めて明らかとなったものである.一方で,SPM観察では各種条件を検討してみたものの所望の像を得ることができなかったため,表面処理法および観察用プローブの変更などを次年度に検討する.また,マルチフェロイック酸化物の薄膜の試作に向けた予備実験として,山本らの作製した半導体薄膜の原子分解能観察とその評価を実施した.その結果,測定した電気特性を裏付ける結果が得られ論文において報告を行った.TiPd形状記憶合金における双晶界面の評価については,年度末の現地での実験観察は延期となってしまったが,前年度に得られたデータに対しアントワープ大学の研究グループの支援のもと整備したStatSTEMと呼ばれる統計的評価法を適用することにより原子変位の精密評価を行うことができた.アントワープ大学現地での観察を組みわせることができれば,より精緻な評価が期待できる結果となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走査電子顕微鏡(SEM)による酸化物の強誘電ドメイン構造の観察法の研究についてはおおむね順調に進んでいる.2つのマルチフェロイック特性を有する酸化物YMnO3および(Ca,Sr)3Ti2O7についてドメイン観察法の検討を実施し,それぞれ異なる条件下でドメインが可視化できることを見出した.このうち(Ca,Sr)3Ti2O7についてはこれまでにSEMによる観察報告はなく,新たに観察可能な条件を見いだすことができた.一方,新たに導入した走査プローブ顕微鏡(SPM)による観察は十分に明瞭な像を得ることができておらず,引き続き試料作製方法および観察条件の検討を要する.一方,原子分解能での評価を容易にするため,収束イオンビーム(FIB)による10 μm四方サイズの酸化物小片を単結晶より抜き出し,観察を試みた.しかし,単結晶本体の観察時と同様の条件では対応するドメイン構造が観察されなかったため,FIB加工による影響や観察条件についてさらなる検討を要する.TiPd合金の双晶界面評価については,アントワープ大学の支援により整備したStatSTEMと呼ばれる原子分解能像の統計的評価法を適用することにより,原子変位評価を実施した.評価はおおむねスムーズに実施できたが,より低ノイズの電子顕微鏡像が必要であるため,次年度に向けた観察試料作製を実施した.(現地での観察も年度末に予定していたものの感染症の流行により延期となった.)また,前年度より新たに観察対象に加えたチタン合金のオメガ相については,Ti-Mo合金をベースとして2種類のオメガ相の比較検討が可能な最適な合金組成を検討し,次年度のアントワープ大学における観察評価に向けた準備を整えた.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であることから,本年度課題として残された項目の検討,ならびに補足データの収集と論文化を進める.まず第一に,走査プローブ顕微鏡(SPM)によるドメイン観察に適した条件を検討し,圧電応答力顕微鏡法により評価したドメイン構造と走査電子顕微鏡(SEM)により得られたドメイン構造を比較する.これにより,イメージング法の物理的描像を明らかにする.また導電性原子間力顕微鏡法により界面近傍の導電性評価を行い,導電率とコントラストの関係を明らかにする.また収束イオンビーム(FIB)を用いたドメイン観察法について試料作製条件を検討する.具体的には,ドメイン構造に対してサイズ効果があることが予想されるため,FIB加工する試料のサイズを変化させながらSEMによるドメイン観察を実施する.また,マルチフェロイック特性を有する酸化物を用いた薄膜を測定し,薄膜時のドメイン構造および電磁気特性の評価を行う.TiPd合金とTi-Mo系合金については試料ダメージを最小化した試料を作製し,予備観察を実施したのち,アントワープ大学において原子分解能観察および原子変位評価を実施する.これにより,局所的な原子変位と界面特性の関係を明らかにする.
|
Causes of Carryover |
年度末に研究代表者および共同研究者2名で現地での実験および打ち合わせ等のためアントワープ大学訪問を予定していたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となったため.旅費の執行率が低くなっている.次年度に状況に応じて再度訪問の計画を検討する.
|
Research Products
(5 results)