2019 Fiscal Year Research-status Report
ウラン等の環境負荷元素をその場分析するスマートシステムの開発
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18KK0148
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
香西 直文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (80354877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 恵子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00420076)
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (00636912)
青柳 登 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (80446400)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロ流路 / モバイルデバイス / ウラン / 重金属 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、初年度に整備したマイクロ流路作成装置や元素検出研究設備を用いて、システム構築に向けたデバイス開発及び検出システムの開発を行った。スマート分析にはマイクロ流路等の微小検出システムが必須であるが、既存の技術ではクリーンルーム等の特殊設備を利用してガラスやシリコンウエハー表面にフォトリソグラフィー技術を適用してエッチング処理することで一つのデバイスを作成しており、多大なコスト及び特殊技術が求められる。このため、様々な検出環境に適した流路デバイスを作成することは極めて困難であった。この課題に対して、本年度はレーザーカッターを用いて極めて簡便に汎用性の高いマイクロ流路を作成する技術を発明した。この技術により、ひとつの流路デバイスを数分で作成可能になり、かつ低コスト化を達成した。この技術について国内特許1件の出願を行った。元素検出技術について、昨年度はナノファイバーから成るポリマーメンブレンを用いて鉛、カドミウム、水銀を検出したが、その検出限界に課題があった。この課題に対して、本年度は新たにポリマーメンブレンや元素選択性吸着材を開発して低濃度まで検出可能な技術を開発した。この成果について英語論文及び国内特許出願の準備を進めている。また、電気シグナルとして元素を検出可能な研究データも得ており、来年度はこれらを組み合わせたシステム開発を行い、更に対象元素を拡大した実験を計画している。一方、重元素を多く含む土壌に実際に生息している植物中の重元素濃度を調べることは、上記デバイスの設計目標となる。令和元年度は、高濃度のウランを含む土壌2箇所にそれぞれ生息する代表的な植物であるヨシとススキの地上部におけるウラン濃度を測定した。ウランはヨシでは検出されず、ススキでは乾燥前の生体濃度で0.2ppm程度であった。来年度は背の低い植物を中心にウラン濃度を定量する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、分析に用いるマイクロ流路の開発や元素検出システムについて新規な結果を得ており、計画はおおむね順調に進展している。コロナウイルスによる制限により、米国の研究グループと共同で開発予定の検出、可視化システムの構築に遅れが生じている。また、渡米スケジュールの変更も生じている。しかし、その他の計画については順調に進んでおり、テレビ会議等を有効に活用した共同研究計画の遂行も予定している。流路上で分析を実現するためにはマイクロ流路の作成技術の確立が課題になるが、新規微細加工技術により極めて簡便かつ低コストでの流路作成技術を確立した。さらに、新規ポリマーナノファイバーメンブレンを開発して、より高感度な元素検出を達成した。全体計画実現のための重要な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発を行った化学的、機械的技術を駆使した検出デバイス構築技術を基に、さらに実験や鋭意検討を重ねていく。本年度は開発した流路と検出のための化学反応を組み合わせて反応最適化や電気化学的な検出システムも構築していく。また、実際の環境試料を用いた分析や試料から元素を抽出するための技術開発も進めていく。渡米スケジュールに変更が生じたが、電話会議や各々の場所で遂行出来る開発から進めていくことで全体の計画を遂行する。実際の汚染環境下に生育する植物体内の重元素濃度について、対象を広くして測定を行う。
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Causes of Carryover |
外国出張及び滞在に予定していた経費を繰り越した。新型コロナウイルスの拡散により外国への渡航が禁止されたためである。現時点では渡航解禁後に外国滞在等当初目的に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)