2018 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性菌の出現抑制を目的とした豚レンサ球菌感染症の新規診断・治療法の基盤開発
Project/Area Number |
18KK0193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠矢 真理 順天堂大学, 医学部, 助教 (20804694)
関崎 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70355163)
相川 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (70725499)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | 豚レンサ球菌 / 血清 / IgG / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、唾液中・血清中に誘導される抗体に着目し、抗体によって認識される菌側の抗原分子を同定し、さらにS. suisの種々の抗原に対する反応性の高い特異的な人工抗体を選択する。この抗体を用いて、S. suis抗原への結合に最適な結合領域を設計し、各種抗原に対して結合能の高い抗体を短期間でかつ安価に得る創薬基盤を構築し、S .suis感染症の診断用抗体の均一化・標準化やIntravenous Immunogloblin(IVIG)用の治療用抗体の基盤開発を行う。本年度は、タイ・ベトナムにおいて養豚農場で、豚血液の採取と血清の分離、IgGの精製を行い、S. suis P1-7株に対する反応性を確認した。また、日本の養豚場でも同様に、サンプリングを行い、茨城県の東大農場、および茨城県の動物衛生試験所に依頼を行って、約50サンプルの収集を行った。日本においては、豚レンサ球菌感染の有無にかかわらず、生育過程である程度の抗菌剤の利用が行われているため、その投与状況も含めて、血清サンプルを分離を行った。また、茨城県動物衛星試験所には、豚レンサ球菌感染症への罹患歴のある血清サンプルも保存されており、その病豚由来血清も、数は少ないもののサンプルとして使用した。その結果、豚血清中のIgGは、S. suisの表層抗原で高分子量側と中分子量側に反応するグループの大きく2種類に分類されることが明らかとなった。また、病豚由来サンプルでは、著しく反応性が低いものもあり、感染防御が成立していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のカウンターパートであるタイ・ベトナムにおいて、タイではカセサート大学、ベトナムではノンラム大学の研究室を利用させていただき、血清の分離からIgG精製までを行った。ベトナムではアフリカ豚コレラの流行が始まっており、農場でのサンプルの収集については、現地の動物衛生試験所の方々によって、血液サンプルの分離を行った。日本では、東京大学附属農場、および茨城県畜産試験所の協力を得て、血液の採取・血清サンプルの分離/精製を行った。1つ懸案なことは、現在ベトナムではアフリカ豚コレラの流行によって、現在サンプリングを行っているホーチミンでは問題はないが、ハノイから流行が南下しており、その流行の程度によっては今後のサンプルの収集が困難になる恐れがある。また、日本においても愛知県で豚コレラが散発的に流行しており、今後のサンプリングに影響がでる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
I.S. suisのゲノム情報を用いて、機能的に細菌の生育に必須である、あるいは病原性の発揮に重要と考えられる表層分子を選択する。対象とする菌株は、データベースに登録されている35株の完全長ゲノムや、これまでにcps領域の解析に用いたドラフトゲノム情報を利用する(京都大学・相川知宏、順天堂大学・遠矢真理)。 II.S. suisの代表的菌株であるP1/7株(血清型2型)の表層分子を抽出し、臭化シアン活性化カラムに結合させる。Iで採取した唾液・血清中抗体をこのカラムに吸着させ、唾液中・血清中に存在するS. suisに結合する抗体分子の分離・精製を行う(京都大学・中川一路)。 III.IIで得られた唾液中や血清中抗体を用いて、S. suisの表層タンパク質抽出物、あるいは主要な表層・分泌抗原分子をターゲットにして、抗原となっている分子を同定する。サンプリングで得られた各抗体と結合する分子を、トリプシン消化断片を用いてLC-MS/MS解析を行い、結合タンパクを同定する(京都大学・共同利用施設を利用する)。このタンパク情報をIIの解析結果と合わせて、サンプル中で共通に認められる抗原分子を同定する(京都大学・相川知宏)。
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Causes of Carryover |
共同研究者の遠矢真理氏は、2018年10月に妊娠され、2019年7月に出産予定である。そのため、一時期、体調によって実験できない日数があったため、差額が生じた。
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