2021 Fiscal Year Research-status Report
From toads to fireflies: Exploring the evolutionary transitional process of the prey-toxin resource in snakes
Project/Area Number |
18KK0205
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 哲 京都大学, 理学研究科, 教授 (80271005)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
城野 哲平 広島修道大学, 人間環境学部, 助教 (70711951)
竹内 寛彦 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40726444)
江頭 幸士郎 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10738826)
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 防御機構 / 毒 / 進化 / 爬虫類 / 頸腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も新型コロナウィルス感染予防対策のため海外渡航が一切実施できなかった。そこで、これまでに得られた関連データを解析し、以下の3つの研究課題について論文化を中心に進めた。 中国固有種であり、ホタル毒を取り入れて頸背腺に溜めるチフンヤマカガシを対象として、どのようなホタルを選好し、捕食するかの行動実験の結果をまとめた。本種はブファジエノライドを持つマドボタル亜科の幼虫にのみ選好性を示し、ブファジエノライドを持たないホタル亜科の幼虫に対しては選好性を示さず、捕食しないことを論文として報告した。 頸背腺を持ち、ミミズを主食とするミゾクビヤマカガシ種群はこれまで4種とされていたが、分子系統解析により合計7つのクレードに分けられることを示した。すなわち、これまでミゾクビヤマカガシ、イツウロコヤマカガシ、レオナルドヤマカガシとされてきた種にはそれぞれ隠蔽種が1種ずつ存在することが示唆された。 ヤマカガシの頸腺毒に含まれるブファジエノライドの組成は個体間や個体群間で異なることがわかっていたが、日本全国からのサンプルに基づき、これをより詳細に分析した。その組成の地理的変異パターンは、毒源となっているヒキガエルの皮膚毒成分の地理的変異パターンと大きくは呼応したが、ヤマカガシ独自の地域変異があることも示された。 また、中国の共同研究者の協力を得て、成都生物研究所に保管されているミゾクビヤマカガシ類を用いて、頭骨のマイクロCT撮影を行った。その結果をヤマカガシと比較したところ、ミミズ食への依存度に対応した骨形態や歯の形状の差異が存在することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度もコロナ禍の影響で海外渡航がまったく実施できなかった。そのため、計画していた中国でのヘビ採集、実験、頸腺毒採取、および標本計測はいずれも行えなかった。また、台湾での採集と行動実験も実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、渡航制限の緩和により中国での調査は実行できると見込んでいるが、完全緩和にはならないと予想されるので、調査地域と期間は次のように限定する。主な対象種は四川省、陝西省、甘粛省に分布するチフンヤマカガシとミゾクビヤマカガシとし、8月から9月に訪問する。現地の共同研究者の協力のもとに野外でヘビを採集し、成都生物研究所で行動実験を行う。潜在的に餌動物となりうるヒキガエル類およびホタル類も可能な限り採集する。 野外でのヘビの捕獲時には、強制嘔吐法により胃内容物を調べる。採集した個体は成都生物研究所で飼育し、頸腺毒の抽出、および、ヒキガエルやホタルに対する嗜好性の行動実験を実施する。一部の個体は分子系統解析のための組織を摘出したのち、液浸標本とし、捕食に関わる頭骨形態の計測やマイクロCTスキャンによる撮影を行う。また、採集したヒキガエルの皮膚毒およびホタルの毒成分の抽出と保存を行う。化学成分分析と分子系統解析は京都大学等で行うため、化学サンプルとDNAサンプルは日本へ持ち帰る。 比較対象としての日本国内のヤマカガシ、ヒキガエル類およびマドボタル類の採集も継続し、毒成分の化学分析および嗜好性実験を行う。 データが十分に集まった課題については、論文化を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で海外渡航がまったく実施できなかったため、国外旅費経費を執行できなかった。また、これに関係する行動実験や分析等もほぼ実施できなかったため、物品経費にも余剰がでた。 本年度は海外渡航制限が緩和され、調査が実行できる見通しであり、これまでの遅れを可能な限り取り戻す。
|