2021 Fiscal Year Research-status Report
Diversification of tropical rain forest ecosystems as consequences of asymmetric tree adaptations to nitrogen vs. phosphorus deficiencies
Project/Area Number |
18KK0206
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 農学研究科, 教授 (20324684)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相場 慎一郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (60322319)
宇野 裕美 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(PD) (30803499)
辻井 悠希 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (70826742) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 生態系生態学 / 群集生態学 / 生物地球化学 / 生理学 / 元素欠乏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では以下の2仮説を検証し、熱帯降雨林生態系の空間的変異のメカニズムを明らかにする。 1)熱帯降雨林生態系では、内在的な生物地球化学的作用によりP欠乏とN欠乏を2つの端点とする環境傾度が形成される。2)この傾度にそって樹木が非対称な応答を示すことで、熱帯降雨林生態系は空間的に変異する。 当該年度においては、マレーシア・サバ州(ボルネオ島)の試験地から2019年度に採集した土壌を用いて栄養塩の化学分析とDNA抽出による土壌微生物群集の解析を行い、土壌PとN濃度の変化に対して土壌微生物群集がどのように応答するのかを明らかにした。また、土壌PとN濃度の変化に応じて森林の更新特性がどのように変化するのかについても解析を行った。 試験地(デラマコット森林保護区)の35箇所の森林観測プロットから、2020年2月に表層土壌(5cm深)を採集し、凍結乾燥させた。この凍結乾燥土壌から、PowerSoil Pro Kitを用いて土壌微生物のDNAを抽出した。抽出したDNAについて、16SとITS領域の amplicon解析により、それぞれ細菌と真菌の分類群を同定し、群集の多変量解析を行った。細菌と真菌それぞれから得られた門(phyla)レベルのread数を変数として主座標分析(PCoA分析)を行ったところ、細菌と真菌いずれにおいても1軸に沿って35プロットが展開され、1軸値は土壌全Cと全N濃度と強く相関していた。このことから、土壌有機物濃度(全Nなど)が細菌と真菌いずれにおいても群集組成を決定していることが示唆された。また、土壌全N濃度の減少に伴い、微生物バイオマス当りのN分解酵素(N-acetyl-glucosaminidase)が増大した。このことから、基質(土壌有機物濃度)が減少すると微生物群集が交代し、基質利用効率の高い分類群にシフトしていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴う国外調査制限のために、新たな森林調査区の設定や土壌採集を行うことができなかった。このため、2019年度に採集した土壌を使って、化学分析を進めているが、サンプル数が限られており、当初の計画通りには研究が進行していない。研究の遅れを補完するため、新たに土壌微生物群集の解析などに取り組んでいる。これについては、当初予定していなかった解析ではあるが、独自性の高い研究成果を得ることが出来た。特に、土壌有機物濃度(全N)の変化に対して、土壌微生物群集が規則的に推移する明瞭なパターンが示されている。さらに微生物群集の推移に伴い、土壌酵素活性も推移するパターンが得られた。そこで、土壌NとPの相互作用がどのように土壌微生物群集に影響を及ぼし、さらに土壌NとP循環を駆動する土壌酵素活性にどのように作用するのか、新たな研究展開が期待できるまでに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度に未実施のマレーシア・サバ州における熱帯降雨林の現地調査と試料採集を行う。デラマコット保護区に調査区を10箇所ほど設置し、毎木調査を行い、樹木群集組成を記録する。各調査区においては、土壌断面を掘削し、土壌サンプルを採集する。さらに、優占する樹種から各種数個体を選び、陽葉と材サンプルを採集する。インドネシア・東カリマンタン州においては、内陸の砂岩および石灰岩地帯に調査区を10箇所程度設置し、現地調査を行い、樹木群集組成を記録する。土壌試料および陽葉・材試料も同様に採集する。採集した土壌と植物サンプルは冷蔵してサバ州および東カリマンタン州内の共同研究施設に持ち帰る。新鮮な土壌に抽出液を加え、無機態Nを抽出する。抽出液は京都に持ち帰り、比色法によって無機態N濃度を決定する。残りの土壌は冷蔵状態で京都に持ち帰る。また、フォーリン法により生葉の全フェノール濃度を決定する。残りの生葉および材は熱風乾燥後に粉砕し、京都に持ち帰り、以下の分析に供試する。 京都に持ち帰った土壌サンプルについては、ジチオナイトにより土壌Fe・Alを溶解し、ICP(発光プラズマ分光分析法)によりFe・Al濃度を定量する。さらに、アルカリ溶解法により土壌Siを抽出し、比色法により定量する。Fe・Al及びケイ酸塩の濃度比を鉱物風化の指標とする。さらに、Tiessen & Moir法により土壌Pを分画し、P画分の濃度を求める。粉砕した葉サンプルの細胞壁を生成し、細胞壁濃度を決定、さらに細胞壁に含まれるNの濃度をCNコーダーにて定量する。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大のために、海外渡航が厳しく制限され、予定していたマレーシアにおける海外調査と土壌採集ができなかった。予算においては、旅費が多くの比重を占めているため、海外渡航禁止により大きな使用残額が生じた。また、予定していた土壌採集も出来なかったため、化学分析関連の予算にも残額が生じた。今年度は状況が改善し次第にマレーシアとインドネシアにおいて海外調査を実施し、土壌を採集する予定である。これらの現地調査と化学分析を集約的に進めることで、研究の遅れを取り戻す。
|
Research Products
(7 results)