2019 Fiscal Year Research-status Report
新規素材とマイクロ加工技術で再現する脳微小空間を用いたニューロン遊走機構の解析
Project/Area Number |
18KK0212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
見学 美根子 京都大学, 高等研究院, 教授 (10303801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都 甲一郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (30597034)
中澤 直高 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (90800780)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / マイクロファブリケーション / ニューロン移動 / 神経発生 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類脳の皮質形成過程で、新生ニューロンは神経組織間隙に分け入り最適経路を選んで遊走する。この時、通り道となる周辺組織の形や配向、硬さ、伸展などの物理的環境が細胞膜に負荷され、遊走の駆動力となる細胞骨格の動態に影響すると考えられる。本研究ではメカノバイオロジー、マイクロファブリケーション、スマートポリマーの最新知見と技術を駆使して力学的なミクロ環境や微小刺激を操作できる培養空間を設計し、遊走する細胞の微細構造や応力分布の動的変化を高速高解像ライブ観察で解析する実験系を開発する。これを用いてニューロン遊走に伴う微細構造や応力分布の動的変化を解析し、組織内を遊走するニューロン運動の新たな分子力学機構を解明することを目標とする。 昨年度までに、シンガポールで作成したミクロ加工基板を用いて顆粒細胞の隘路遊走を観察し、アクトミオシンの動態がガラス表面(2D)と隘路(3D)で異なることを見出した。本年度は、ミクロ加工基板の改良を施し、アクトミオシンの動態制御機構を解析した。観察の結果、ミオシンは2Dでは核前方の先導突起に集積するのに対し、3Dでは核後方に集積し細胞膜の収縮を誘発することがわかった。また、ミオシン収縮の引き金となるミオシン軽鎖リン酸化を制御するROCK及びMLCKの阻害により、核後方の細胞膜収縮と3D遊走が著しく阻害された。隘路の幅5um以上では遊走は阻害されなかったことから、ミオシン軽鎖リン酸化は隘路遊走時の力発生に特異的に必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シンガポールの共同研究者と微細パターン加工と細胞実験を繰り返して、細胞が再現性良く隘路遊走し、核変形及び細胞骨格動態をライブ観察できる至適なパターンに改良した。これを用いて3D遊走を制御するアクチン制御機構の解明に向け分子経路の同定に着手した。また、同基板を用いてアクチン動態を全反射顕微鏡及び超解像ライブ顕微鏡で解析する共同研究をシンガポールにて開始したが、コロナウイルス感染防止の国策で、実験を最後まで敢行できなかった。状況が落ち着き次第再開する予定である。一方、遊走するニューロンの足場となる脳皮質の各層の硬さの違いを模倣する素材と、発生に伴う組織の拡張を模倣する刺激依存的に異方性に伸張する素材の開発については、求める時間スケールで変形する素材が得られてない。引き続き開発を続けていく。
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Strategy for Future Research Activity |
隘路遊走の原動力となることが明らかになった核後方のアクトミオシン収縮の分子制御機構を、培養再構築系を用いた分子操作実験及び生化学実験で明らかにする。また、全反射顕微鏡観察により、平面上での遊走制御の要となる細胞接着の形成と分解、アクチン逆行流の時空間制御に着目し、隘路内と平面上で遊走させた顆粒細胞で比較解析を行う。定量解析の結果から、2Dおよび3D遊走の力発生機構の違いを説明する物理モデルの構築を行う。 組織の硬さの違いや形態形成に伴う拡大を模倣する基質の作成に着手する。現在候補となっている素材に改変を加え、細胞実験に用いることのできる基質を開発する。
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Causes of Carryover |
脳皮質の各層の硬さの違いを模倣する素材と、発生に伴う組織の拡張を模倣する刺激依存的に異方性に伸張する素材の開発について、数回の会議で候補となる素材の絞り込みを行なったが、実際の開発には着手しなかったため、繰り越しを行った。2019年度に細胞実験に用いることのできる基質を開発する。
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Research Products
(9 results)