2018 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiological functions of ion channels in the chronic inflammatory and fibrotic disorders
Project/Area Number |
18KK0218
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
今泉 祐治 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60117794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 進 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70275147)
山村 寿男 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (80398362)
鈴木 良明 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (80707555)
鬼頭 宏彰 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40749181)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 慢性炎症 / リンパ球 / 軟骨細胞 / マクロファージ / カルシウムシグナル / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症慢性化過程の細胞機能変動において、免疫担当細胞に機能発現するイオンチャネルがどのような病態生理学的意義を果たしているかは明らかにされていない。本研究の目的は、貪食機能を有する免疫担当細胞の活性化と、炎症慢性化による組織リモデリングにおける細胞内Ca2+濃度制御に関わるイオンチャネル群とその分子機構を解明し、炎症慢性化・組織リモデリングにおける新規治療標的イオンチャネルを探索・同定することである。本年度の研究実施計画は、マウス腹腔マクロファージのサブセット依存的なイオンチャネル発現・活性の解析であった。マウス腹腔マクロファージは、Large peritoneal macrophage (LPM)とSmall peritoneal macrophage(SPM)の二つのサブセットが存在することが報告されていることから、両細胞を分取しイオンチャネル発現解析を行ったところ、SPMにおいて有意にKCa3.1 K+ チャネルが高発現し、細胞機能制御に関与する可能性を明らかにした。 変形性関節症(OA)に対するCa2+シグナルの関係を明らかにするため、in vitroのOAモデルとしてIL-1β処置した軟骨細胞を用い、OA病変とイオンチャネルの関連を調べた。IL-1β刺激により、マウス初代培養軟骨細胞において、一過性あるいは反復性のCa2+シグナルが観測された。また、その下流シグナルとしてNFATやCaMKの活性化を示唆するデータも得た。種々のイオンチャネル阻害薬により、IL-1βによって誘発されるOAマーカー(ADAMTS5やIL-6)発現も有意に抑制された。 カルガリー大学Wayne R. Giles教授を日本に招聘し、特別講演および共同研究に関するディスカッションを行った。特に、日本人若手研究者のカルガリー大学への2019年度の派遣に向けて、具体的にどこの研究室へ派遣し共同研究を実施するか綿密な打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施した研究項目において、マウス腹腔マクロファージの両サブセットにおけるイオンチャネル発現をリアルタイムPCR法により検討したところ、SPMにおいてKCa3.1 K+チャネルが高発現することが明らかになった。SPMは単球から分化した炎症性マクロファージであり、炎症性サイトカイン産生能や細胞遊走能が高く炎症誘導に関与すると考えられている。SPMにおけるKCa3.1 K+チャネルの高発現は細胞内Ca2+シグナルを正に制御することで細胞機能活性化に繋がることが想定される。以上の結果を踏まえ、炎症性腸疾患モデル及び敗血症モデルマウス由来の腹腔マクロファージにおけるイオンチャネル発現・活性を検討することで、炎症時におけるマクロファージ機能に対するイオンチャネルの役割を検討する予定である。 IL-1βの軟骨細胞への急性投与により惹起されるCa2+シグナルが、OAマーカー発現を誘発することを明らかにした。また、選択性は低いもののいくつかのイオンチャネル阻害薬によってこのOAマーカー発現誘導が抑制された。これらの結果を基にして、IL-1β誘発性のCa2+シグナルによるOA病態形成機構が、より詳細に明らかになると期待される。 カルガリー大学側の窓口であるWayne R. Giles教授とこれまでに綿密な連携を取り、共同研究の方向性を具体化してきている。2019年度から日本人若手研究者をカルガリー大学に派遣して、共同研究を加速する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように炎症性疾患モデルマウスより貪食能を有する免疫細胞を回収し、細胞機能に対するイオンチャネルの病態生理学的役割を検討する。研究を進める上で参考とする情報は、これまで申請者らが行ってきた急性・亜慢性・慢性炎症性腸疾患モデルマウスに対するKCa3.1阻害薬投与実験より得られている。また、新規の炎症性疾患モデルマウスとして敗血症性急性肺傷害モデルを導入し、腹腔マクロファージに加えて、肺組織における好中球・肺胞マクロファージにおけるイオンチャネル発現・活性について検討する。 in vitroのOAモデル(IL-1β処置したマウス初代培養軟骨細胞)を用い、IL-β刺激による軟骨細胞内のCa2+シグナルの発生機構とそれによる下流分子の発現・活性変化、OAマーカー発現に至る経路をより詳細に明らかにする。また、OAモデルマウスあるいはOA患者由来細胞を用いて、実際のOA病態部位でのCa2+シグナルについて、in vitroの結果を踏まえて詳細な発生機構を明らかにする。 これらの研究について、カルガリー大学の研究者(Dr. KubesやDr. Zamponi、Dr. Altierら)と共同研究を開始する。
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Causes of Carryover |
2018年度中にカルガリー大学へ日本人若手研究者を派遣する予定であったが、両者の都合が合わなかったため、派遣することができなかった。そのため、予定よりも旅費の使用額が少なく、次年度使用額が生じた。2018年10月にカルガリー大学Giles教授が来日した際に共同研究の打ち合わせをしており、その後もメールや電話にて継続的に連絡を取り合っている。Giles教授を介して他のカルガリー大学の研究者との交渉も進んでおり、2019年度中には若手研究者をカルガリー大学へ派遣することができると考えらえる。
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Research Products
(12 results)