2019 Fiscal Year Research-status Report
Brain pathways conveying sensation from jaw-closing muscle spindles and the scientific basis of treatment with a dental splint for Tourette syndrome
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18KK0259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90201855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 貴寛 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (60314184)
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60632130)
村上 旬平 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (70362689)
大原 春香 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40754726)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス / 神経回路 / 筋感覚 / スプリント / 脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
トゥレット症候群(TS)の症状は歯科スプリント装着後の咬合で軽減するが、その効果は、歯科スプリントで咬合高径が上がった状態での咬合によって賦活する閉口筋筋紡錘感覚が上位脳に伝達されることで発現すると考えた。しかし、閉口筋筋紡錘感覚の脳内経路は不明であったので、閉口筋筋紡錘感覚が、橋に存在する三叉神経上核を介して、視床に伝達され、さらに情動に関与する大脳島皮質に伝達されることをラットで見つけた。しかし、三叉神経上核から大脳島皮質に至る閉口筋筋紡錘感覚が、視床ニューロンを介していることの直接の証明はできていない。 そこで2018年度は、麻酔下のラットを用い、咬筋神経の電気刺激に対する応答から三叉神経上核を同定後、そこに順行性神経トレーサーであるbiotinylateddextranamine(BDA)を充填したガラス管微小電極を刺入して、BDAを電気泳動で微量注入した。さらに同一ラットで、咬筋神経の電気刺激に対する応答から、咬筋筋紡錘感覚が入力する大脳島皮質を同定後、そこに逆行性神経トレーサーであるFluorogold (FG)を充填したガラス管微小電極を刺入して、FGを電気泳動で微量注入した。光学顕微鏡観察用に切片を作成後、注入されたBDAで標識された軸索と注入されたFGで標識された神経細胞体を呈色した。BDA標識された軸索終末がコンタクトしているFG標識された細胞体の視床内分布を調べた。その結果、このような二重標識されたニューロンが視床後内側腹側核尾腹内側部に認められた。 また、2019年度と2020年度での実施を予定している電子顕微鏡を用いたシナプスの観察を円滑に開始するための準備として、使用する手技、器具、機器の確認のために、2019年1月に研究代表者の吉田と分担者の佐藤が韓国慶北大学のBae教授の所に出向いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、2018年度の研究結果の展開を目指した。その途中で、実験データの精度を上げるため、得られていたデータを詳細に解析し直し、評価し直す必要が出た。そのために、2019年9月に研究代表者の吉田と分担者の佐藤が韓国慶北大学のBae教授の研究室を再訪問した。その結果、(1)2018年度の時点では、閉口筋筋紡錘感覚が入力するのは、視床髄板内核群の中心傍核であると思っていたが、髄板内核群の細胞構築を再検討した所、中心傍核ではなく、中心傍核の尾側レベルの腹外側部に存在するoval paracentral nucleus(OPC)に限局していることが、神経トレーサーを用いた形態学的実験ならびに、OPCに刺入したガラス管微小電極から咬筋神経の電気刺激に対する応答および下顎の受動的下制(開口)に対する応答を記録して、新たに見つかった。この成果は、Brain Research誌に投稿中である。2018年度の研究の再検討中に、(2)(1)で明らかになった頭部筋の筋紡錘感覚の視床OPCへの投射路の特異性を示すことが重要と判断された。比較によって、頸部と上肢の筋の筋紡錘感覚が延髄の外側楔状束核から視床の後腹側外側核の腹内側部(VPLvm)には投射するが、髄板内核群には投射しないことを示した。これによってOPCへの投射は、頭部筋の筋紡錘感覚の特異性を示すことが明らかになった。その結果を、Brain Structure and Function誌に投稿している。この研究を発展させ、シナプスでの情報伝達機構の解明を目指して、2020年3月に韓国慶北大学のBae教授の研究室を再訪問する予定であったが、コロナウイルス禍のため渡航できなかったので、研究の展開方向を再検討しなければならない状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2018年度、2019年度の研究成果を発展させて、次の研究を行う予定である。(1)順行性神経トレーサーを、既に明らかになっている閉口筋の筋紡錘感覚が入力する視床髄板内核群のoval paracentral nucleus (OPC)と頸部と上肢の筋の筋紡錘感覚が入力する視床の後外側腹側核の腹内側部(VPLvm)に注入し、大脳皮質への投射の様態を検討する。これによって、閉口筋筋紡錘感覚の高次脳機能を、頸部と上肢の筋の筋紡錘感覚の高次脳機能と比較して、その特性を解明する。(2)(1)で明らかになる大脳皮質の投射部位に逆行性神経トレーサーを注入し、これら複数の大脳皮質部位に投射する視床ニュ-ロン群の特徴を比較検討する。(3)(1)の大脳皮質投射部位への逆行性神経トレーサーの注入と同時に、三叉神経上核への順行性神経トレーサーの注入を同一ラットで行い、標識される軸索終末と標識される視床OPCニューロンの細胞体(および樹状突起)とのコンタクトの分布を観察する。コンタクトを含む資料を作成し、研究代表者の吉田と研究分担者の佐藤とが韓国慶北大学に持参し、Bae教授の指導の下でコンタクトの形成様態を詳細に観察し、ニューロン間の情報伝達機構の特徴を解明する。ただし、コロナウイルス禍が継続して渡航できない可能性がある。8月までに渡航できない時は、研究の展開方向を再検討しなければならない。その時は、上記の課題(3)を後回しにし、(1)と(2)の課題により集中することも考えている。 研究最終年なので、3年間に得られる全データを、研究代表者の吉田と4名の研究分担者に、韓国のBae教授を加えて検討し、閉口筋筋紡錘感覚の脳内伝達機構の詳細な解明に努める。さらに、臨床家である共同研究者の村上を中心に、トゥレット症候群のスプリント治療に関与しうる閉口筋筋紡錘感覚の役割も検討する。
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Causes of Carryover |
研究助成金の申請書にも書いたように、2020年度は、2018年度と2019年度の研究で得たデータの精度を上げる必要が生じたので、動物実験を継続しなければならない。よって、それに必要な消耗品等の購入が必要である。また、2019年度に計画していた韓国の慶北大学のBae教授の指導を受けるための渡航がコロナウイルス禍のために1回キャンセルされてしまった。そのために、シナプスにおける情報伝達機構の研究が計画よりも遅れてしまった。遅れを取り戻すために、2020年度に韓国のBae教授を訪問しなければならない。さらに、既に得られている膨大な研究データを取りまとめるために技術補佐員をアルバイト雇用したい。3年間の研究の最終年なので、これらの膨大な研究データを取りまとめて論文を作成するためにも、韓国のBae教授を加えて検討する必要がある。このためにも2回、韓国の慶北大学を訪問したい。また、最終年なので、学会発表のための旅費も必要である。論文の英語校正費、論文掲載料も必要である。以上の理由で、2020年度は計画当初よりも多い支出をしなければならなくなった。
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Research Products
(12 results)