2020 Fiscal Year Research-status Report
Levels, fate, bioaccumulation, and risk assessment of harmful environmental chemicals derived from wastes and industrial and domestic drainage in Vietnam
Project/Area Number |
18KK0300
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
国末 達也 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90380287)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田上 瑠美 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60767226)
高橋 真 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (30370266)
鈴木 剛 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (70414373)
松神 秀徳 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10639040)
|
Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2022-03-31
|
Keywords | ベトナム / 廃棄物 / 排水 / 有害化学物質 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度ベトナムの現地調査で入手した電気・電子機器廃棄物(e-waste)および使用済み自動車(End-of-Life Vehicles: ELV)処理場の室内ダストに適用可能なリン酸エステル難燃剤(PFRs)の分析法を確立し、汚染実態と両処理場のプロファイル解析を実施した。対象としたPFRsは、TNBP, TPEP, TPHP, o-TMPP, m-TMPP, p-TMPP, IPPP, TBOEP, TCEP, TCIPP, TDCIPPの11種であり、GC-MS/MSのフルスキャンモードで得られたマススペクトルデータから各物質固有のプレカーサーイオンを、そしてプロダクトイオンスキャンモードの測定から定量イオンおよび定性イオンを選定し、MRM測定条件を最適化した。ダスト中に存在する夾雑物質の除去にはENVI-Carbカートリッジを用い、内部標準物質を用いた回収試験の結果、良好な回収率が得られた。e-wasteおよびELV処理場の室内ダストを分析した結果、TPHP, TPEP, EHDPP, TCEP, TDCIPPが両解体処理場から100%で検出され、不適切処理に伴い作業環境へ放出されていることが判明した。また、ハノイ市を流れるNhue riverで採取した河川水中のPPCPs分析を継続して進め、水生生物に対する予測無影響濃度(PNEC)を基に生態影響評価をおこなった。その結果、トリクロサンとビスフェノール類でハザード比が1を超過する検体が存在し、河川に生息している水生生物への影響が懸念された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在まで、現地研究者との共同研究を通じてe-wasteおよびELVに含まれる難燃剤等の有害化学物質による作業環境汚染、そして生活・工業排水に混入しているPPCPsの河川水汚染に関する研究は計画通りに進んでいる。本年度は、昨年度分析した臭素系難燃剤の代替物質として近年使用量の増加が指摘されているPFRsを対象に、室内ダストに適用可能な高精度分析法を立ち上げ、e-wasteおよびELV処理場の作業環境におけるPFRs汚染の実態を明らかにした。両処理場でTPHP, TPEP, EHDPP, TCEP, TDCIPPによる汚染が共通して確認されたが、TMPPはELVダストでのみ検出され、TMPPが難燃剤や可塑剤に加えガソリン添加剤等に使用されていることから、ELVオイル由来の影響であることが示唆された。昨年度に分析したハロゲン系難燃剤のダスト中濃度はELVよりe-wasteで明らかに高値であったことを考慮すると、ELV処理場では不適切な作業により一部のPFRsが相当量環境中へ放出されている可能性があり、重要な知見を得ることができた。また本年度は、Nhue riverで採取した河川水中のPPCPs濃度と水生生物に対する予測無影響濃度(PNEC)を比較することで、トリクロサンとビスフェノール類の生態影響リスクが高いことを提示できたことに加え、魚類の組織に適用可能なPPCPs分析法の確立にも成功している。 しかしながら、COVID-19の影響で本年度は現地調査が実施できておらず、e-waste・ELV処理施設の作業者と同地域に住む非作業者に対する有害化学物質の曝露実態およびリスク評価の研究調査について現地共同研究者と保健所関係者との打ち合わせも実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベトナムのe-wasteおよびELV処理場では、多様なハロゲン系およびリン酸エステル系難燃剤による作業環境汚染が示されたことから、今後、作業者への曝露リスクを評価する必要がある。これまで作業場のダスト試料を用いた模擬胃液・小腸液溶出試験を実施してきたが、現在、溶出した化合物におけるダストへの再吸着を避ける実験系の再構築をおこなっており、より精度高く可給態濃度を明らかにすることで、吸収リスクの高いハロゲン系およびリン酸エステル系難燃剤を評価する計画である。 またこれまでの研究で、ハノイ市内を流れるNhue riverへ感染症治療剤、高血圧治療剤、抗不安剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、可塑剤など多種のPPCPsが未処理のまま直接流入している実態が明らかとなったことから、本年度新たに立ち上げた魚類の組織試料に適用可能な分析法を用いて、魚類における残留レベル(取込・分配)を解明し、組織濃度からもリスクを評価する。さらにe-waste処理施設ではカバーや基盤のプラスチック部分を破砕しており、その処理水を近接する川へ直接放出していることがこれまでの現地調査で判明している。そこで本年度実施できなかった現地調査をおこない、e-waste処理施設の排水、近接する川の水・魚類のサンプリングを展開する予定である。加えて、e-waste・ELV処理施設の作業者と同地域に住む非作業者に対する有害化学物質の曝露実態およびリスク評価の研究調査について、現地共同研究者と保健所関係者との打ち合わせを計画している。
|
Causes of Carryover |
本年度は現地調査ができなかったため、旅費等の未使用分を繰り越す形となり、1年の研究延長が認められたことから現地調査の費用にあてる予定である。COVID-19の影響で実施困難な場合でも、これまで採集した数多くの試料に対して多種類の化学物質を分析する計画であることから、主にガラス器具や有機溶媒・試薬など化学分析に関わる物品が必要となる。また、溶出試験に必要な器具・試薬も継続して購入する。測定機器の消耗品部品における定期的な交換も必須となり、とくにPPCPsの定量に使用するAB SCIEX QTRAP 5500 LC-MS/MS systemは、高精度・超微量測定が可能な反面、性能を維持し安定稼働させるには消耗品部品の交換だけでなく分析部の定期的な調整費も必要であるため、本研究費を活用する計画である。さらに、研究成果を国内外の学会やシンポジウムで発表するための旅費、そして国際学術誌に論文として投稿する際の印刷費等にも使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)