2021 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア・南アジアにおけるヒ素汚染地下水の生物学的浄化方法の開発
Project/Area Number |
18KK0302
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
宮内 啓介 東北学院大学, 工学部, 教授 (20324014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 千弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30271878)
黄田 毅 東北学院大学, 工学総合研究所, 研究員 (40727442)
遠藤 銀朗 東北学院大学, 工学総合研究所, 客員教授 (80194033)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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Keywords | ヒ素汚染 / メコンデルタ / ファイトレメディエーション / 亜ヒ酸酸化細菌 / 水質改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナムとカンボジアのメコンデルタで起こっている自然由来のヒ素による環境汚染問題に対して、海外の研究者と共同で、低コスト・省エネの地域結合型新規浄化技術を開発することを目的とする。日本で小規模圃場試験を行なっているヒ素高蓄積植物を用いた浄化技術と、植物にヒ素を取り込ませるための微生物による亜ヒ酸酸化処理について、それぞれベトナム、カンボジアの研究者とともに取り組み、二つのシステムを組み合わせたシステムの構築と評価までを行う。亜ヒ酸酸化処理については、実験室レベルの装置を用いた実験で、試験水に加えた750ppbの亜ヒ酸がほぼヒ酸に酸化され、その後鉄イオンと共沈させることで、地下水のヒ素イオン濃度を大幅に減少させることが可能であった。そこで、実験室レベルから規模を拡大することにし、これまでと同様のコークスを担体とした散水ろ床型の装置を設計した。 一昨年度に調査した井戸のうち、ヒ素濃度が高く、土地の貸借が可能な場所(総ヒ素濃度約1000ppb)を選定し、現地で装置を製作した。現地の井戸水を汲み上げて散水ろ床型の装置に散水した。亜ヒ酸が酸化されることで得られるヒ酸を、共存する鉄イオンと共沈することで除去する、ということを想定していたが、本実験で用いた井戸水の鉄濃度が4mg/L程度と低かったため、鉄イオンを外から加えてヒ酸を沈殿させる方法を試みた。約1年間にわたって実験を継続し、温度、pH、電気伝導度、総鉄濃度、総マンガン濃度、総ヒ素濃度、亜ヒ酸濃度についてそれぞれ分析をおこなった。その結果、ヒ素濃度は100 ppb程度まで下がったが、それ以上の低下が見られなかった。これは、加えた鉄イオンがコロイドを形成し、沈殿せずに流出してしまい、その際にヒ素も付随して流出してしまったためと考えられる。そこで、装置の後段に緩速砂ろ過装置を追加することにし、その工事を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
カンボジアでの研究については、現地の井戸を借りて、実験用の装置の設置と稼働まで到達することができ、1年間にわたるデータを取得することができた。しかし、新型コロナウィルスの影響で現地に赴くことができず、研究を進めることが困難であった。ベトナムにおいても、先方の研究室のスタッフの移動や研究代表者・分担者の渡航が不可能な状況下で、研究が進んでいない。そこで、1年間の研究期間延長を決定し、手続きを行なった。日本においてモエジマシダを用いて同様の研究をするために圃場での栽培、胞子採取、育苗委託を行なっているが、この一連の流れについては順調に稼働している。
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Strategy for Future Research Activity |
カンボジアにおいては、現地大学および一部業務を委託している建設コンサルタントと協力して遠隔で実験を進めていく。実験プラントに新たに装置を追加したので、それを用いてデータを採取する。また、共沈させた沈殿物内のヒ素の固定化について検討していく。ベトナムにおいては、渡航可能になり次第、現地にて引き続き植物を採取しつつ、タンク内の条件の測定データを得、日本でも同条件でモエジマシダの生育・ヒ素吸収実験を行いたい。
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Causes of Carryover |
海外渡航が不可能であったため、旅費として計上していた予算、および現地で購入予定だった消耗品代等を使用することができなかった。1年間の研究期間延長を決定し、手続きを行なった。渡航が可能になり次第、現地での研究を行う予定である。
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