2021 Fiscal Year Research-status Report
International comparative study on the integration of decarbonization transition and democratic innovation
Project/Area Number |
18KK0318
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
|
Project Period (FY) |
2019 – 2022
|
Keywords | 気候市民会議 / 英国 / 民主主義 / 気候変動対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、2020年4月から延期されている英国への渡航は、本年度も見送らざるをえなかった。渡航に備えた態勢づくりを継続しつつ、国内で可能な活動を進めるという年度当初の方針に沿って、研究を実施した。 前年度に引き続き、主な海外共同研究者(英国ニューカッスル大学・Stephen Elstub博士)と連携して、英国を始めとする欧州の気候市民会議の動向の把握を進めた。また、研究会やシンポジウムでの報告や雑誌記事の形で、これまでの研究成果を発表した。その中では「脱炭素社会への転換と民主主義の革新・深化との統合的実現」という本研究のもともとの主題を、「気候民主主義」という新たなキーワードで捉えることを提案し、欧州を始めとする世界各地での気候市民会議の広がりや、日本の地域や若者グループの間での市民会議の実践を、その表れとして位置づける議論も行った。 本研究の基課題である基盤研究(17H01927、2017-19年度)や、それを発展させて申請・採択された基盤研究(20H04387、2020-22年度)とも連動して進めてきた一連の研究を総括し、書籍の形で発表するための執筆作業も進めた。その成果は、2022年度に出版予定である(三上直之『気候民主主義:次世代の政治の動かし方』岩波書店、2022年5月)。 2022年2月には、渡航を予定している英国で新型コロナウイルス感染症関連の規制が撤廃・緩和される動きがあったのを受け、渡航時期を再検討した。調整の結果、5月26日に、当初の予定通り英国ニューカッスル大学に渡航することが決まり、渡航に必要な準備を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、前年度に引き続き本年度も英国への渡航はかなわなかったものの、渡航先の状況変化を受けて2022年度には渡航できる目処が立ち、年度末にかけて準備を再開することができた。また年度全体を通じて、海外共同研究者と密接な連携を維持しつつ、気候市民会議の動向把握や、研究成果の発表とその準備を進めることができ、国内およびオンライン上で可能な範囲で一定の成果を上げることができた。以上の状況に基づいて、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年5月26日から、当初計画の通り英国ニューカッスル大学に客員研究員として渡航し、海外共同研究者とともに共同研究を実施する。渡航延期せざるをえなかった2年間に、国内で、またオンラインも活用して進めた研究の成果も踏まえて、次の内容を実施する方針である。 (1)英国における「気候民主主義」の実態に関する調査:2019年以来、英国の自治体や地域、国レベルで行われている気候市民会議や、その他、気候変動対策に関する市民参加の事例について、主催者や企画運営者、関係者へのインタビュー調査や資料収集を行い、英国における「気候民主主義」の実態を明らかにする。英国以外の欧州諸国の状況についても、適宜、情報収集して参照する。 (2)日英における気候変動対策に関する市民会議事例の比較分析:関連する基盤研究の一環として研究代表者らが実施した「気候市民会議さっぽろ2020」と「脱炭素社会への転換と生活の質に関する市民パネル」や、主な海外共同研究者であるStephen Elstub博士が実施や評価に関与した英国の複数の気候市民会議など、日英の市民会議の事例を対象として、参加市民の意見形成のプロセスや、得られた会議結果を中心に比較分析を行う。 (3)本研究課題に関連するテーマ、分野の研究者・実践家等との交流・意見交換:上記(1)および(2)に加え、学会やシンポジウム等への出席や、ワークショップ・研究会等の実施を通じて、気候変動対策と市民参加、民主主義のイノベーションなどに関わる研究者や実践家等との間で交流やネットワーキングを図り、本研究に関する情報交換や意見交換を進める。 なお、渡航先機関であるニューカッスル大学での客員研究員としての招聘期間は2023年5月25日までの1年間であり、上記研究の進捗状況を勘案して、適当な時期に補助事業期間の再延長申請を検討する。
|
Research Products
(5 results)