2021 Fiscal Year Research-status Report
内湾生態系における生体分子の動態モデリングと漁業生産環境の変動予測への適用
Project/Area Number |
18KK0319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂巻 隆史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60542074)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | 無給餌養殖漁業 / 環境容量 / 脂肪酸組成分析 / 粒状有機物 / 数値シミュレーションモデル / 沿岸海域 / 生態系サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 2020年にカナダ東部ノバスコシア州内3湾より採取したカキ軟体部の炭素・窒素安定同位体比や脂肪酸組成等の化学組成データについて,その空間分布や相関関係に関する解析を進めた.その結果,一部の化学指標について明確な湾内・湾間の空間変化パターンが明らかになった.特に2湾では,窒素安定同位体比が湾奥から湾口部にかけての勾配を有し,さらにそれと複数の脂肪酸指標の間で有意な負の関係が見いだされた.今後,これらの結果について解釈を深める.その過程では,カキ養殖が各湾内の粒状有機物の空間分布におよぼす影響を,受入研究者らが構築した数値シミュレーションモデルからSRI (Seston Reduction Index)として算出し,それと各化学指標との関係も解析する. 2) 物質動態や二次生産環境の評価への脂肪酸指標利用の有効性を検討するため,2021年夏季にノバスコシア州東岸1湾およびプリンスエドワードアイランド州1湾を対象に,受入研究者が中心となって湾内の粒状有機物や貝類の採取を行った.そして,今後それら試料の安定同位体比・脂肪酸組成の分析を代表者研究室にて実施するために,受入研究者のDalhousie University内の実験室に共同で整備した作業環境を利用し化学分析用試料の前処理を実施し完了した. 3) 実海域における脂肪酸動態の理解とモデル化を目指し,基課題がフィールドとする志津川湾で取得したデータ(浮遊性と沈降性の粒状有機物,さらに異なる水深帯の粒状有機物の脂肪酸組成データなど)を活用して,沈降・分解過程での脂肪酸組成の変化・挙動を継続して解析した.一部の脂肪酸指標が粒状有機物の分解性や酸素消費活性を強く反映していることが明らかとなり,それらの関係性を統計モデルとして記述した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染症拡大により,調査や実験室での試料処理に遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
・共同研究者と実施した現地調査より得られた試料の分析やデータ解析を実施し,特に,沿岸海域の粒状有機物の脂肪酸組成と各種環境条件の関係を多変量統計解析により明らかにする. ・一連の実験・調査結果のまとめ,およびモデル解析の作業を共同研究者とともに実施する. ・研究期間延長により2021年度から繰り越した研究費については,2022年度主に共同研究用試料の化学分析のための費用として支出する予定である.
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