2020 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a theoretical framework for prenatal diagnosis based on the concept of duty
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18KK0323
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
圓増 文 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60756724)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 自律 / 権利 / 義務 / 出生前検査 / 出生前診断 / 出生前スクリーニング / 義務論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出生前検査提供の文脈に焦点を絞り、自律概念に依拠した枠組みの限界を明確化すると共に、この概念に代わる理論枠組みを構築すること、さらにそれを一部の文化や社会にのみ当てはまる枠組みとしてではなく、国際的に最低限共有可能な枠組みとして提唱することを目指している。本年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的蔓延の影響で渡航できなかったため、特に日本の文脈における課題に着目し、下記の成果を得た。 1)義務に依拠した枠組みの検討:昨年度に引き続き、義務に依拠した枠組みの発展可能性について、特に公的出生前スクリーニング提供にまつわる政府の義務の観点から、検討を行った。具体的には、現代カント主義のO.オニールの議論に依拠して、義務に依拠した枠組みの利点を明確化すると共に、完全義務や不完全義務など伝統的な義務の分類に基づき、出生前検査提供に関する政府の義務の検討を行った。その結果、同検査をスクリーニングとして提供するという政府の義務は自明のものではなく、他の政府の義務と比較考量されなくてはならないものであることを示した。この研究成果は、国際学術誌bioethicsに論文として掲載された。 2)日本における課題の整理:出生前検査提供をめぐる日本の歴史的・制度的文脈を踏まえた上で、現在の日本における課題を整理した。その結果、今後検討されるべき課題の一つとして「全妊婦に対する一律の情報提供を行うべきかどうか」の問題があることを示した。 3)(差別)表出論とその批判の分析:2)で取り上げた課題の検討を行う手掛かりとして、「出生前検査の実施は検査対象となる障害と同じ障害をもつ人への差別である」と主張する表出論に注目し、この主張に向けられた批判を整理すると共に、それぞれの議論の妥当性を日本の文脈と課題に即して検討した。この検討は現在も継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、本年度(令和2年度)4月より渡豪し、1)豪州を含めた欧米社会での出生前検査提供の現状とそれをめぐる議論の把握、2)公的スクリーニング制度正当化論とその批判に関する論点の整理、3)とくにNIPTの登場によって提起された課題をめぐる論点の整理を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止策として3月中旬より豪州政府によって開始された入国制限の影響を受け、渡航することができなかった。また、同感染症による混乱等により、共同研究者とのメールを通じた意思疎通を十分に行うことができなかった。そのため、本年度は主に文献研究を通じて、日本国内の課題の明確化と議論の整理、検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航予定先の豪州では、令和2年3月以降、令和3年4月現在も豪州政府によって外国人に対する厳しい入国制限の方針が採られており、さらに受け入れ先モナッシュ大学も海外からの研究者受け入れを停止しているため、現時点では渡豪の具体的見通しが立っていない。対応策として、国内において実施可能な下記の三点を計画している。1)メールやオンラインを通じて共同研究者と連絡を取り合い、日本と豪州での出生前検査および中絶をめぐる制度の違いを整理すると共に、自律や義務についての理解の違いを明確にする。2)特に日本で近年課題となっている「全妊婦に対する出生前検査と中絶についての一律の情報提供」の方針にまつわる制度に着目し、豪州での制度の現状と課題、それらの背景にある考え方の特徴を、文献研究および共同研究者との意見交換を通じて、明らかにする。3)表出論とその批判の吟味を通じて、一律の情報提供という方針に対してこの議論がどこまで妥当するかという点について、日本と豪州それぞれの文脈に照らして検討する。
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Research Products
(1 results)