2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a theoretical framework for prenatal diagnosis based on the concept of duty
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18KK0323
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
圓増 文 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60756724)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | 自律 / 権利 / 義務 / 出生前検査 / 出生前診断 / 出生前スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本および欧米(オーストラリア、ニュージーランドを含む)の出生前診断に関する政策や規制の違いを念頭におきつつ、特に欧米でのこうした政策や規制に関わる基本的倫理原則として強い影響力をもつ「自律」概念の限界を明確化すると共に、こうした政策や規制に関連し提起される倫理的課題を分析・検討していくための理論枠組みとして「義務」概念に注目し、この概念が出生前診断に関する倫理的課題を検討する上で立脚するに足る基礎となりうるのか否かを検討することである。昨年度に引き続き本年度も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的蔓延の影響で渡航できなかったため、特に日本の政策・方針に着目し、下記の成果を得た。 1)差別表出論に依拠した日本の制度・方針の評価:無認定施設でのNIPTの急速な拡大を背景に日本でも近年「出生前検査に関し全ての妊婦に情報提供をすべきだ」という意見が強まっている。2021年5月に公表された厚生科学審議会専門委員会の報告書では、これまでの方針が大きく転換され、「出生検査に関する情報提供を積極的に行うべき」という方針が採用されている。本研究では、積極的な情報提供を控える従来の方針の根拠として引き合いに出されてきた差別表出論に着目し、この議論に対する代表的な三つの批判を日本の文脈に即して吟味することを通じて、一律の情報提供の方針導入が差別表出論の議論に当てはまるか否かを検討した。これを通じて、表出論が指摘するように、一律の情報提供が、制度上の検査対象となる胎児特性と同じ特性をもち生きる人の生の質への否定的信念を含意し得ることを示した。 2)義務や責務、徳をめぐる先行研究の批判的吟味:出生前検査を取り巻く関係者が果たすべき義務や責任について検討するために、この文脈における徳倫理学等の議論に着目し、先行研究の動向を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
渡航予定先の豪州では、令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により、外国人の入国制限が継続されており、渡航することができなかった。また、同感染症による混乱等により、共同研究者とのメールを通じた意思疎通を十分に行うことができなかった。そのため、本年度は主に文献研究を通じて、日本国内の政策の検討を行うと共に、出生前検査や中絶の文脈における義務や責務に関する議論の動向の整理を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航予定先の豪州モナッシュ大学では、2021年11月頃より留学生の受け入れを再開したものの、オミクロン株による感染再拡大の影響を受けて、受け入れ数を制限し続けている。海外からの研究者に関しては、今後の受け入れ方針がまだ明確でなく、現時点では渡豪の具体的見通しが立っていない。今後の対応策として、国内において実施可能な下記二点を計画している。 1)義務概念に依拠した議論の体系化を進めるため、出生前検査の文脈における義務や責務、徳をめぐる先行研究の議論に注目し、文献研究および共同研究者との意見交換を通じて、各議論の理論上の課題を検討する。 2)メールやオンラインを通じて共同研究者と連絡を取り合い、日本と豪州での出生前検査および中絶をめぐる制度の違いやそこから派生する倫理的課題の違いを整理すると共に、出生前検査や中絶についての考え方や意識の違いを明確にする。
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Research Products
(1 results)