2020 Fiscal Year Research-status Report
Empirical studies on the emergence of innovations and knowledge networks
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18KK0347
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 恵里 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 講師 (30706742)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | Nestedness structure / Technological complexity |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,自動車部品サプライヤの立地環境に着目し,技術的な複雑性指標(Technological complexity)で測った洗練性の大きい部品が,どのような地域で製造されているか明らかにすることを目的とした。自動車部品において,洗練性が大きい部品は分析時点での最先端技術を要する部品である傾向が高いことを受け,部品サプライヤの立地環境と自動車部品のイノベーションの関係について分析した。分析には,これまで利用してきたデータに,自動車部品を製造しているサプライヤの詳細情報を収録する資料から工場の詳細情報(住所,製造部品)を追加したデータを整備した。ネットワーク科学の分野で用いられている手法を適用し,洗練性の大きい部品群と小さい部品群を区分し,それら部品群を製造する工場の立地状況を比較検証した。 分析結果より,洗練性が大きい部品を製造するサプライヤは,洗練性が小さい部品を製造するサプライヤに比して分散立地することなく,狭い範囲に集積立地する傾向があることが明らかとなった。これは,イノベーティブな部品を製造するサプライヤは局所的に立地していることを示し,産業集積で生じる知識のスピルオーバーをはじめとする外部性の重要性を示唆している。 さらに,各国を対象とした自動車部品に関する同様のデータが入手できたことから,自動車部品ネットワークの国際比較分析を行った。分析には,欧州,日本,米州,中国,ASEAN・インドの地域別データを用いた。 分析結果から,欧州,日本,米州における自動車部品の知識ネットワークは類似した構造であり,部品間のつながりを複雑に有する部品が多いことから部品間での知識共有が大きいことが示された。ただし,各地域の洗練性の大きい部品は日系サプライヤが製造していることから,各国の自動車部品の知識ネットワーク形成に国内サプライヤの生産活動が影響していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,新型コロナウイルス感染症の影響に伴い予定していた国内学会や国際会議へ出席することが不可能となり,研究成果を報告する機会や多くの研究者と交流する機会が例年に比して縮小した。さらに,海外共同研究者とオンラインでの議論を円滑に行うための環境づくりに苦慮したため,計画通りに研究をまとめることが困難であった。そのため,本研究に対するフィードバックを得られる機会の減少により,当初計画よりも論文改訂に時間を要し,論文の取りまとめに遅延が生じている。 しかし,海外の自動車産業に関するデータを入手できたことから,自動車産業の国際間比較に関する共同研究を遂行することができた。当初計画では国内の自動車産業のみを対象としていたが,国際間の比較分析という進展があったことにより,国内での自動車部品の知識ネットワークの特徴について,国際的な観点からの知見を得られた。研究成果は,学術雑誌に刊行された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を論文としてまとめ,国際誌への投稿を完了することを見据えている。同時に,知識ネットワークとサプライヤの立地に関する分析を精緻化する。どのような部品を製造し,どのような地域に立地しているサプライヤからイノベーションが生じやすいか明らかにすることを目的とした研究を進める。 分析には,すでに整備を進めているサプライヤの工場情報に関するデータを用いる。今年度は,複数の資料からサプライヤの工場情報を特定するための手順を確立できたが,今後の分析に用いるためにはこれまでのデータでは不十分な部分があることが分かっている。データを補完しながら,十分な確認作業を通じて分析に耐えうるデータベースの構築を進める。工場情報は複数年データを準備しているため,時系列分析へ拡張する。 自動車部品サプライヤと製造部品間に存在する入れ子構造(Nestedness structure)から,サプライヤの階層性が存在することが明らかになっている。階層の上位にいるサプライヤほどイノベーションを必要とする洗練性の大きい部品を製造していることから,製造される部品の洗練性とサプライヤの立地環境の関係について空間計量経済モデルを用いて解明する。特に,立地密度の高いサプライヤ群に着目し,イノベーションと産業集積の地理的範囲を示したうえで,各地域に形成されている産業集積とそこで生じるイノベーションに差異があるか分析する。
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Research Products
(2 results)