2019 Fiscal Year Research-status Report
外国籍者の階層的地位の規定メカニズムに対する理論モデルの構築
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18KK0357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永吉 希久子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50609782)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 移民 / 地位達成 / 階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国籍者が在留資格や国籍に応じて階層化されるメカニズムの理論モデルを構築することにある。その準備として、まず在日外国籍者を対象とした調査データの分析を行い、在日外国籍者の地位達成を規定する要因を検証した。分析の結果、外国籍者は労働市場の中で、異なる三つの位置づけを持つグループに分けられることが明らかになった。第一のグループは高技能かつ非正規雇用のグループ、第二のグループは高技能かつ正規雇用のグループ、第三のグループは低技能かつ非正規雇用のグループである。また、第一・第二のグループと第三のグループを分けるのは、高等教育を受けたかどうかであり、第二のグループを他の二つと分けるのは、「新卒」として日本の労働市場に入ったかどうかであった。この結果は、新卒一括採用により正規雇用者を雇い入れる日本型雇用慣行が、外国籍者の社会経済的地位にも大きく影響していることを示している。 さらに、どのグループに入るかには国籍による差もあり、特に南米出身の外国籍者は学歴や滞日年数、日本語能力等が同じであっても、第三の不安定雇用かつ低賃金のグループに入りやすかった。日本の労働市場は大企業/中小企業、正規雇用/非正規雇用の間での移動が少ない二重労働市場の構造を持っていることが指摘されているが、非正規雇用としての労働市場に編入しやすい南米出身者は、そこから地位を向上させることが困難になっていることがうかがえる。 以上の結果は、労働者の人的資本に応じた自由な移動を想定するアメリカの移民の地位達成モデルが日本には妥当しない可能性を示しており、労働市場の分断と日本型雇用慣行を念頭に入れたモデルを構築するための土台となる知見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカには2021年度の渡航を予定しており、そこに至るまでの文献整理、データ分析は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は外国籍者と日本国籍者の労働市場における地位の比較を、賃金プロファイル等の分析をもとにさらに発展させ、日本の労働市場における外国籍者の階層的地位の特殊性を検証する。特に、2019年度の分析から見いだされた三つのグループへの分割が、日本国籍者にもみられるのか、それぞれのグループの特徴に日本国籍者と外国籍者で異なる点はあるのかについて検討する。2021年度にはアメリカに渡航し理論モデルの構築を行う予定であるが、新型コロナウイルスの影響により渡航の可否については慎重に判断する必要がある。2021年4月の渡航が困難であった場合には、渡航時期を夏にずらし、それまではオンラインでのミーティング等を通じて研究を進める予定である。
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