2019 Fiscal Year Research-status Report
調整型市場経済レジームの自由主義化をめぐる政策変化と政策実施過程の国際比較分析
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18KK0358
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 調整型市場経済 / 競争政策 / 政策過程 / 比較事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「調整型市場経済」に分類される日本とドイツでの自由主義的改革における政府・企業間の権力関係を解明することにある。 日独は「資本主義の多様性論」において、同様に「調整型市場経済」に分類されてきた。しかしながら、両国ともに1990年代、2000年代以降、アメリカ型の「自由主義型市場経済」をモデルとする制度改革が進められてきた。一般的には自由主義的再編は政府の役割の縮小を示唆するが、実際には必ずしもそうではない。日独の競争政策の比較事例研究を通じて、国家の権力が強化されてきた過程を明らかにする。 今年度は主にドイツの競争政策の歴史的発展過程や現在の状況を分析するため、諸資料や先行研究の収集・検討を行った。日独の競争政策はともに第二次大戦後、アメリカの強い影響下で構築されたという点で類似した歴史的背景をもつが、その後の展開は両国で異なっている。日本では終戦直後に独禁法が制定され公正取引委員会が設置されたものの、実際の運用面では抑制的であった。とはいえ、時期によっては運用が強化されることもあり、状況依存的である。これに対してドイツの競争政策は厳格さと一貫性を保ってきた。両者の分かつものとして、政策パラダイムの有無が挙げられるかもしれない。ドイツでは、経済学者のオイケン(Walter Eucken)らを主唱者とする「オルド自由主義(Ordoliberalismus)」のアイディアに基づいて、市場の競争秩序を維持するために国家が介入を行うことが理念的に正統化されてきた一方、日本では同種のアイディアやパラダイムが不在であり、政策の嚮導原理が確立されていないことが、両者の違いを生んできた要因の一つである可能性がある。現時点では仮説の域を出ないが、それが妥当するか否か、次年度以降分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
渡航に伴う事前の準備や渡航後の研究基盤の構築に相当の時間を要し、実際に研究を行う時間を十分に確保できなかったことなどから、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究の遅延を挽回するべく、事例研究に取り組む予定である。他方で、新型コロナウィルスのパンデミックによって、滞在する大学が閉鎖され、参加予定であった一部の国際学会もすでに中止・延期が決定している。加えて、社会生活自体が著しく制限されており研究を十分に行えない可能性があるが、これまでに収集した資料などをもとに可能な限り共同研究を進めていく予定である。
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