2020 Fiscal Year Research-status Report
調整型市場経済レジームの自由主義化をめぐる政策変化と政策実施過程の国際比較分析
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18KK0358
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 調整型市場経済 / 競争政策 / 政策過程 / 比較事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「調整型市場経済」に分類される日本とドイツでの自由主義的改革における政府・企業間の権力関係を解明することにある。主として両国の競争政策を事例にして、研究に取り組んでいる。 日独は、「資本主義の多様性論」において、同様に「調整型市場経済」に分類され、競争政策も、ともに第二次大戦後、アメリカの強い影響下で形成された。こうした点で両国は類似した歴史的・制度的背景をもつ。一般的にいえば、調整型市場経済の下では、企業間競争が抑制される傾向があり、アメリカのような自由主義型市場経済の国と比較して、競争政策の運用が低調になる可能性が予想される。現に日本では、競争政策・独占禁止法の運用はあまり厳格ではなかった。他方、ドイツでは、日本と比較して、競争政策・競争制限禁止法の運用は厳格さと一貫性を保ってきたといえる。両者の違いはなぜ生じたのか、その経緯を歴史的制度論の枠組みに依拠しながら、解明してきた。今年度は日独の競争政策に加え、とくに近年のドイツの競争政策に大きな影響を与えているEUの競争政策の歴史的発展過程や現在の状況についても分析するため、諸資料や先行研究の収集・検討を行った。 競争政策導入時の両国における対応、政策軌道の違いが、その後の政策発展の相違につながったものと仮説を立て、研究に取り組んでいる。とくに、ドイツでは戦前から、市場の競争秩序の維持を目的とした国家による介入を正統化する「オルド自由主義(Ordoliberalismus)」のアイディアが存在し、それが戦後、キリスト教民主同盟政権下で競争政策の嚮導原理になった。これに対して、日本では同種のアイディアや政策パラダイムが不在であり、政策の嚮導原理が確立されずに、独禁法が制定直後に骨抜きにされた。このような違いが、その後の両者の競争政策の展開の違いを生んできた要因の一つである可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスのパンデミックの発生により、社会・経済活動が著しく低下した。滞在先のドイツでは感染者の急増にともないロックダウン(都市封鎖)が実施され、大学への立ち入りも禁止されるなど研究活動を予定通り進めることが難しくなった。共同研究者もさまざまな対応に追われ、本研究に時間を割くことが難しい状況になった。こうしたことから、本研究の進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究の遅延を挽回するべく、事例研究に取り組む予定である。新型コロナウイルスのパンデミックによって、滞在先のドイツでは、感染症対策として今なお厳格な行動規制が敷かれており、大学も立ち入りが制限されるなど、十分な研究活動を行えない環境にあるが、これまでに収集した資料などをもとに、可能な限り研究を進めていく予定である。
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