2019 Fiscal Year Research-status Report
Hospitality and Property: The Right of Natural Communication in Early Modern Hispanic World
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18KK0366
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
松森 奈津子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80337873)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | ホスピタリティ / 交通権 / サラマンカ学派 / プロパティ / プーフェンドルフ / カント / デリダ / ベンハビブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キリスト教君主論―世俗権力は宗教権力から自律してはいるが、カトリシズムに基づく法と正義を尊重すべきだとする理論―を、古来のホスピタリティ論―他者の歓待論―の系譜に位置づけて再検討し、異文化間秩序を探究した初期近代スペインの思想家の重要性を、より明確に提示する試みである。その目的は、第一に、サラマンカ学派と周辺の思想家のカトリック的他者理解を考察すること、第二に、それを古代中世の異人歓待概念からプーフェンドルフやカントを経てデリダやベンハビブに至るホスピタリティ論の文脈に位置づけることにより、初期近代スペインの意義を模索することにある。 具体的な計画は、3年間を予定している。外国機関が複数にまたがること、また国内外双方に成果を還元することから、国内における研究活動も必要になる。このため、5つの外国機関への渡航は3回に分けて行い、この間に集中的に研究者たちと協議し、資料収集や成果報告を行う。国内滞在期間は、国外での研究成果を、講義、セミナー、研究会などで広く発信するとともに、学術論文等の執筆に取り組む。 2019年度は、第一の目的を達成するために、ボストン大学、マックス・プランク研究所、ヨーロッパ研究所に客員研究員として所属し、テクストの内在的分析を行うとともに、各機関の諸研究者との学術交流の場を持った。その成果は、第2回ラス・カサス国際会議依頼報告、マックス・プランク国際ワークショップ依頼報告、ヨーロッパ研究所教授会招待講演、2019年度法哲学会学術大会招待講演の形で公にした。いずれにおいても、初期近代スペイン思想をホスピタリティ論との関連で論じることの斬新さに対する好評価を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、国内外においてそれぞれ1回ずつ口頭報告を行い、それらを通じて本研究課題の第一の目的を遂行する予定であった。けれども、国内外協力機関からのお声かけにより、合計4回の依頼報告、招待講演を行うことができ、その準備、プレゼンテーションの過程で、部分的に第二の目的をも遂行することができた。 この結果、当初計画の初年度の研究が完了しただけでなく、2年目の研究にも取りかかることができたため、当初計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでいるため、このまま当初計画2年目の研究計画を遂行する。すなわち、ハーバード大学歴史学部に客員研究員として所属しながら、さらなる資料調査と学術交流を進め、今年度の法哲学会での招待講演の内容を敷衍して日本語の学術論文を執筆する。余力があれば、当初計画最終年度に行う予定であった英語共著著作所収論文の執筆にもとりかかりたい。
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