2020 Fiscal Year Research-status Report
On the relationship between economic inequality and fiscal/monetary policy in DSGE models with heterogeneous agents and firms
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18KK0368
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山田 知明 明治大学, 商学部, 専任教授 (00440206)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 動学的一般均衡理論 / 金融政策 / 財政政策 / 所得格差 / 資産格差 / ニューケインジアン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、基課題において執筆途中である"The Effects of Monetary Policy Shocks on Inequality in Japan"で得られた研究成果を発展させる形で金融政策と経済格差の関係性について定量分析を行うというものである。具体的には、当該論文で日本の個票データに基づいて発見されたファクトである「金融政策が労働所得格差に影響を与えている」という点から研究をスタートさせた。従来の金融政策と経済格差の関係性を分析した研究では、金融政策ショックは利子率へのショックであることから、労働所得は外生とした上で、資本所得が資産格差に与える影響が注目されてきた。しかし日本においては金融政策が労働所得の格差を拡大させていることから、この点を内生的に説明するためのモデルが必要になる。そのため、企業の異質性の専門家である千賀達郎助教授(Queen Mary University of London、慶應義塾大学)のアドバイスを受けながら、企業の雇用及び投資への意思決定を組み込んだ動学的一般均衡モデルを構築するべくモデル分析を行っている。加えて、「企業のretained earnings (内部留保)が賃金決定及び資本所得と労働所得の間の格差に重要な影響力を持っている」という市村英彦教授(アリゾナ大学、東京大学)の示唆に基づき、国民経済計算における内部留保と格差の関連性について、ライフサイクル型動学的一般均衡モデルをもちいて共同研究を開始した。具体的には、国民移転勘定(National Transfer Accounts)及び国民経済計算(System of National Accounts)と整合的な形でライフサイクルモデルを構築し、富の分配の流れを定量的に分析しようという試みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画調書の予定では、2020年4月に渡英をして1年間、Queen Mary University of Londonにて共同研究を行う予定であった。しかし、2020年3月末にイギリスがナショナルロックダウンを行った。そのため、4月時点での渡英が困難になり、ロックダウンが開けた8月末に渡英をした。より正確には、ロックダウン自体は少し前に解除されていたものの、英国のVisa支給を巡る混乱からVisaの更新が出来ずに日本での待機を余儀なくされた。渡英後は滞在先であるQMULの千賀助教授とコンタクトをとり、研究打ち合わせなども行った。しかし、11月に2度目のロックダウン、12月中旬から帰国する3月までの3ヶ月超の3度目のロックダウンによって、共同研究の打ち合わせや作業は対面ではほとんど不可能となってしまった。また、英国の政府系研究機関であるInstitute of Fiscal Studiesでの研究発表の機会も、研究機関自体が閉鎖されていることから困難となった。その中で、千賀助教授とはZoom等を通じてコンタクトを取り続けた他、同じくQMULのTim Lee助教授、Giulio Fella教授といった経済格差・不平等の専門家達とコンタクトを取り、日本の経済格差と他国の違いなどについて示唆に富むコメントをいただきながら、研究活動を行った。加えて、研究実績の概要にあるように、アリゾナ大学の市村英彦教授との共同研究も開始した。これは、「金融政策が企業業績に影響を与える一方で、企業が業績を改善してもそれを労働所得として分配せずに内部留保として溜め込んでいる結果として目詰まりを起こして格差に影響を与えているのではないか」というコメントに対応するためのものである。こちらの共同研究は、2021年度のComputing in Economics and Fiananceにて報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で記載をしたように、本研究課題は新型コロナウィルスの蔓延に伴う国際的な人の移動の制限の影響を強く受けた。加えて、滞在先が英国(ロンドン)であったことから研究活動には大きな制限が課せられる結果となってしまった。しかし、千賀助教授を始め、Lee助教授、Fella教授等の助けを経て、今後もオンラインでの打ち合わせを行いながら共同研究を継続していく予定である。可能であれば、Zoom等を通じたオンラインでのミニコンファレンスも検討している。また、経済格差に関するデータは一般的に秘匿データ(個人の所得などのプライバシー情報を含むため)であるため、海外からのアクセスは不可能である。そのため当初の予定では、2020年度に日英を行き来しながら日英の個票データを分析する予定であった。しかし、海外の移動が非常に困難な昨今の状況でこれが難しくなっている。2021年度は日本での研究生活になるため、日本における代表的な個票データである家計調査と全国消費実態調査をもちいながら、日本における経済格差の近年の動向を追加的に分析していく。加えて、市村教授とのプロジェクトであるNTA、SNAとライフサイクル型世代重複モデルを結合した形での労働所得と資本所得の格差分析に関しても、継続していく。こちらについては、既に学会報告が採択済みであり、さらなる発展的研究も検討している。
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Research Products
(2 results)