2020 Fiscal Year Research-status Report
性的侵害行為の刑事法的規制を巡る包括的スキームの構築
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18KK0369
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法学部, 教授 (00335572)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 性犯罪 / 家族と刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度のケルン大学における在外研究における研究成果を、①書籍として公刊し、②複数の雑誌に論文として公表し、③学会講演や講演のコメンテーターを行った。 第1に、性犯罪に関する比較法的な検討を広く行った書籍を共編著者として公刊した。その中でも、ドイツ語圏各国、すなわち、ドイツ・スイス・オーストリアにおける性犯罪規定の具体的なあり方を、最新の法改正及び現実の運用実務(判例・裁判例)をつぶさに検討した上で論じ、日本法への参照可能性及び現在日本で議論されている性犯罪規定の改正に関する具体的提言も行っている。なお、台湾における性犯罪規定に関する分析・検討も行っている。 第2に、我が国の性犯罪規定を台湾における性犯罪規定と比較しつつ分析・検討した論文を台湾の法学雑誌に掲載した。台湾における性犯罪規定は、沿革的に我が国の性犯罪規定の影響も受けつつ、独自の発展を遂げている。そうした台湾の性犯罪規定及びそれを巡る議論を参照しつつ、我が国の性犯罪規定のあり方について論じた。また、ドイツにおける性犯罪規定の法改正の最新動向について分析・検討した論文を公刊した。 第3に、ジェンダー法学会において、ドイツ語圏各国の中でも特にドイツの2016年性刑法改正を中心にした議論動向の分析・検討について報告した。ドイツにおける性犯罪規定の改正の動きは2016年以降も継続的に進行しており、そうした動向の分析を通じて、我が国に参照可能な議論を中心に報告を行った。また、ドイツにおけるStealthingに関する講演につき、コメンテーターとして登壇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度の研究成果をまとめて公刊する点に力点を置いた。具体的には、ドイツ語圏各国の性犯罪規定の現実の適用のされ方やそれを巡る議論状況について詳細に調査・分析した前年度における成果を我が国に紹介しつつ、現在我が国が直面している性犯罪規定の改正に際して参照可能な議論を可能な限り多様なオプションとして提示するという作業に従事した。その成果として、共編著書である『性犯罪規定の比較法研究』という大部の書籍を公刊することができた点や、台湾の法律雑誌に論文を公表した点は、本研究の計画が順調に進展していることを示すものと言えよう。 他方で、本年度は、COVID-19の影響により、在外研究に従事することができず、専らオンラインでの研究会を主催し、又は講演会に参加するといった活動に留まり、文献調査やインタビューなどを行うことが著しく困難な状況であった。その点も考慮すると、研究は概ね順調に進展しているとの評価が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、依然としてCOVID-19の影響が残ることが見込まれるものの、共同研究者とオンラインなどで継続的に連携を取りつつ、ドイツ語圏各国の性犯罪規定の更なる改正動向について調査を続け、ヨーロッパにおける性犯罪の改正の動きとの関係についても適宜調査・検討を進めていく予定である。 また、国内における性犯罪研究の協力者とも継続的に連携しつつ、現在我が国で進行している性犯罪規定の改正動向に関する調査・分析を進め、必要な提言や理論的な判断枠組みの構築などを引き続き行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)