2021 Fiscal Year Research-status Report
性的侵害行為の刑事法的規制を巡る包括的スキームの構築
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18KK0369
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法学部, 教授 (00335572)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | 性犯罪 / 性的虐待 / 監護者性交等・わいせつ罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までの研究成果を更に発展させ、かつ、その一部を公表した。具体的には、①我が国の刑法典における性犯罪規定に関する分析を行った書籍を公刊し、②同じく性犯罪規定の改正動向に関する分析を行った論文を公刊し、③ドイツ刑法典のうち、主として性犯罪にかかわる規定について我が国に紹介した。 ①については、2017年に我が国の刑法典における性犯罪規定が改正されて監護者性交等・わいせつ罪が新設されたところ、『家族と刑法:家庭は犯罪の温床か?』(有斐閣、2021年)において、このような規定が持つ意義につき、被害児童の性的自由・性的自己決定権を保護するものと解するのみでは不十分であり、むしろ被害児童の健全な発達・育成の保護も併せて考慮すべきとの視点を設定しつつ、そのような理解こそが児童虐待の中でも特に性的虐待に対する刑法的規律という観点から望ましいことを論じた。 ②については、法務省に設置された「性犯罪に関する刑事法検討会」の「取りまとめ報告書」(2021年5月)に対して、ドイツ語圏各国のみならず広く比較法的な見地を基にして、性犯罪規定の在るべき改正の方向性がなお明確に示されていないという批判的視座を示しつつ、その内容を分析・検討した。 ③については、法務省において実施されたドイツ刑法典の日本語訳プロジェクトに参画し、ドイツにおける性犯罪を巡る最新の議論状況を踏まえつつ、ドイツ刑法典における性犯罪規定の適切な我が国への紹介を行うことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度と同様に、ドイツ語圏各国の性犯罪規定の現実の適用のされ方やそれを巡る議論状況について詳細に調査・分析した成果を我が国に紹介しつつ、現在我が国が直面している性犯罪規定の改正に際して参照可能な議論を可能な限り多様なオプションとして提示するという作業に従事した。その成果として、単著の書籍である『家族と刑法:家庭は犯罪の温床か?』や共著の書籍である『ドイツ刑法典』を公刊し、また、現在進行中の刑法典における性犯罪規定に対する批判的分析を行った論文を公刊することができた。これらの成果は、本研究の計画が順調に進展していることを示すものと言えよう。 他方で、本年度は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により、在外研究に従事することができず、文献調査やインタビューなどを行うことが著しく困難な状況であった。その点も考慮すると、研究は概ね順調に進展しているとの評価が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、依然としてCOVID-19の影響が残ることが見込まれるものの、状況が許す限りドイツにおける研究滞在を行い、それを通じて、ドイツ語圏各国の性犯罪規定の更なる改正動向について調査を行い、ヨーロッパにおける性犯罪の改正の動きとの関係についても適宜調査・検討を進めていく予定である。 また、国内における性犯罪研究の協力者とも継続的に連携しつつ、現在我が国で進行している性犯罪規定の改正動向に関する調査・分析を更に推し進め、必要な提言や理論的な判断枠組みの構築などを引き続き行っていく予定である。
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Research Products
(4 results)