2021 Fiscal Year Research-status Report
Efficient terahertz emission based on spin caloritronics
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18KK0377
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水口 将輝 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (50397759)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | スピンエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超短パルスレーザーを用いたスピンダイナミクスの研究手法を取り入れることにより、スピンカロリトロニクスを基軸とした高効率テラヘルツ波の発生機能の開拓を目指すことである。具体的には、熱磁気効果を用いて全く新しいテラヘルツ波の発生原理を実証し、その高効率化を図ることを目的とする。今年度は、渡航前の予備実験として、熱スピン流から異常ネルンスト電圧への変換過程について考察を深めるため、テラヘルツ波の発生用に利用する多層膜における熱磁気効果を詳細に調べた。スパッタリング法を用いて非磁性層を二種類の強磁性層で挟んだ多層構造を作製し、その熱電効果を調べた。特に、非磁性層を介して2つの強磁性層が交換結合により磁気結合した多層膜の異常ネルンスト効果の測定を室温で行った。その結果、非磁性層の膜厚を変化した試料において、異常ネルンスト効果の大きさが非磁性層の膜厚に応じて変化することが分かった。このような非磁性層の膜厚に対する変化は、異常ホール効果では観測されておらず、熱磁気効果に特有の現象であることが示唆された。この結果は、多層膜構造において複数の強磁性層間の磁気結合が、テラヘルツ波の発生機構に大きく寄与することを示す結果である。これらの試料について、具体的な測定の手法や測定時期などについて、渡航先の研究者と詳細な議論を行った。これにより、今後の研究の方向性と研究計画を立案することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航後の研究の展開に向けて、準備と予備実験がおおむね順調に進んでいる。渡航先の研究者とは、具体的な試料の構造や測定の手順などについて議論を重ねており、渡航後の綿密な研究計画が立ちつつある。また、研究計画に沿った試料の準備や、渡航中の国内での代替要員の確保も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、渡航前に全ての試料の準備と渡航後の研究スケジュールの立案を完成させる。その後、渡航計画を立案し、実際に渡航して研究を開始する。まず、強磁性金属に対してフェムト秒レーザーを照射することにより高速な熱勾配を局所的に生じさせる。短パルス熱流が金属内で伝播することにより、超高速な熱磁気効果の電圧信号が得られるため、テラヘルツ波が発生すると考えている。帰国後は、得られたデータを元に、データの整理と解析を行う。同時に、この原理の理論的な解釈を行い、実験への効率的なフィードバックを図る。
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