2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of functional open spaces using well-known two-dimensional nanomaterials
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18KK0382
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 公法 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00401448)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 機能性超空間 / 二次元ナノ物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元ナノ物質は,厚さ約一ナノメートル,広がり数十ナノメートルの二次元ナノシートを基本ユニットとする凝集体である。本研究では,地球上で最も産出量が多いケイ酸塩鉱物中のナノシートを用いて,未だ実現されていない機能性超空間の創成を目的とする。初年度は,二酸化炭素分子について,常温・常圧環境下で物理吸着と化学吸着が同時に発現するナノ空間の開発に着手した。事前に分子シミュレーションによる材料設計を行い,代表的なケイ酸塩鉱物であるサポナイトについて,アルカリ金属イオンを所定量導入した試料を作成した。ナノシート空間配列の基本操作の一つである並進を実施し,内部にエッジサイトが導入されたナノ空間を作成した。ナノ空間計測はポジトロニウム分光実験により行い,サイズにして3オングストローム,9オングストロームほどのナノ空間が生成されていることを確認した。これらナノ空間内部のエッジサイトには,8面体シートの頂点に弱く結合した酸素が露出しており,外部からの二酸化炭素分子はこの酸素を奪い取ることで自発的に炭酸イオン化することが,フーリエ変換赤外吸収分光実験により確認された。試料を渡航先機関に持参し,二酸化炭素吸着実験と評価を行った。試料を完全に閉じた状態にし,二酸化炭素ガスフローを行い,(Carbon,Hydrogen,Nitrogen)Elemental Analysisにより二酸化炭素吸着量を調べた。二酸化炭素吸着量は上記ナノ空間量と相関することがわかった。加えて,セシウム133,炭素13固体核磁気共鳴実験を推進した。導入された二酸化炭素は,ナノシート表面のセシウムに四重極相互作用により弱く物理吸着する一方で,フーリエ変換赤外吸収分光実験により確認された炭酸塩化により化学吸着するものもあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,二種類の機能性超空間の開発を進める予定である。一つ目は,常温・常圧環境下で二酸化炭素の物理吸着と化学吸着が同時に発現するナノ空間である。二つ目は,近傍に準一次元アイスを生成するナノ空間であり,常温・無加湿環境下で伝導度10-2 Scm-1を達成する超プロトン伝導体の開発を目的としている。初年度は事前に国内の研究機関で,分子シミュレーションによる材料設計,それに基づいた試料作成を行い,オングストロームスケールのナノ空間の開発に成功し,これらナノ空間内部で二酸化炭素分子が自発的に炭酸イオン化することを確認した。国内での事前準備,及び関連する実験は全て予定通りである。渡航先研究機関では,二酸化炭素ガスフロー実験と(Carbon,Hydrogen,Nitrogen)Elemental Analysisを行い,二酸化炭素吸着について定量的な知見を得ることができた。さらに,セシウム133,炭素13固体核磁気共鳴実験を推進し,二酸化炭素分子が上記ナノ空間内壁に物理吸着し,いくらかは化学吸着により固定化されることもわかった。渡航先研究機関での実験も全て予定通り行うことができた。常温・常圧環境下で二酸化炭素が物理・化学吸着するナノ空間の開発はほぼ終了したと言うことができる。炭酸塩化は,二酸炭素固定化技術として期待されている反面,地質環境中では風化により1000年以上も時間を要するため,高温・高圧条件,化学薬品の使用とともに進められてきた。本研究で,常温・常圧,化学薬品を使用せずに,炭酸塩化による二酸化炭素固定化を達成できたことは意義がある。以上より,現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発予定の二つの機能性超空間の一つである,常温・常圧環境下で二酸化炭素の物理吸着と化学吸着が同時に発現するナノ空間の開発はほぼ終了したと言える。2年目である2020年度は,もう一つの機能性超空間である近傍に準一次元アイスを生成するナノ空間の開発を進める予定である。まず国内の研究機関でケイ酸塩鉱物にメカノケミカル湿式反応による組織細分化を推進し,非架橋酸素の導入を試みる。メカノケミカル湿式反応は,遊星型ボールミルを用いる計画である。メカノケミカル反応では,ケイ酸塩物質を構成するSiO4四面体シートが一部切断され,非架橋酸素を生成する。わずかに存在するAlO4四面体では,酸素が欠落する。AlO4四面体のアルミは非架橋酸素と架橋し,近傍に局所的な負帯電状態が形成された連結したナノ空間を生成することが期待される。ナノ空間計測はポジトロニウム分光実験,比表面積の評価はガス吸着実験により行う。さらに,フーリエ変換赤外吸収分光実験により,メカノケミカル反応により変化した結合に関する情報を得る。上記試料を渡航先研究機関に持参し,一連の固体核磁気共鳴実験を推進する。連結ナノ空間近傍で水分子集団系は空間的制約を受けるため,準一次元アイス状態を形成し,一方で物理吸着した水分子は湿式反応でプロトンと酸素イオンに分解され,プロトンは連結ナノ空間近傍の負電荷に弱局在することが期待される。SiO4四面体近傍の化学環境はシリコン29固体核磁気共鳴により,水分子集団系の状態はプロトン固体核磁気共鳴により調べる。局在プロトンは水素結合を介して準一次元アイスをホッピングするため,常温・無加湿状態で超プロトン伝導が発現することが期待される。プロトン伝導特性を電気化学インピーダンス計測により調べる。この実験は帰国後に国内研究機関で実施する。
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Research Products
(6 results)