2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Solomon-Terao complexes by using D-module theory
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18KK0389
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | Solomon-寺尾複体 / Liouville複体 / Master function / D加群 / 対数的ベクトル場 / 特異点論 / 自由配置 / 加除定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は夏に一ヶ月の渡航予定であったが、様々な用務が発生したため予定を変更し、10月に一週間ほどセビリアに滞在し、共同研究者のCastro氏及びNarvaez氏と問題の共有・論点の整理を行うことが出来た。この打ち合わせで、問題は確実に共有され目的が明確化されたのみならず、お互いの理解の基盤が共有された上に、Solomon-寺尾複体とLiouville複体及びそれらのホモロジーに関する共通的な理解を得ることまで達成できた。初年度としてはこれは想定を超える成果であり、2020年度の本格的な共同研究に向けた良いスタートが切れたと言える。 更に12月に東京大学にて開催された研究集会に、本研究のもう一つの重要なパートを担うDenham氏及びWalther氏が参加しており、私も本研究費を用いて参加したため打ち合わせを行う機会を得ることが出来た。そこではGraham氏の過去の結果であるMaster functionの定義イデアルを用いた、Solomon-寺尾複体とLiouville複体及びそれらのホモロジーと代数に関する統一的な理解の方針が示され、討議の結果これらの間に関連があることが明確となり、研究計画の幅を大きく広げることが出来た。しかしながらこの方針はいまだ代数的な観察にとどまっており、今後幾何学やD加群的視点の導入を検討することで、よりスマートな理論展開を構築したうえで、Castro氏及びNarvaez氏らとの共同研究と融合させることを目指す。 またDimca氏及びSticlaru氏と、超平面配置の対数的ベクトル場の最小次数元に関する加除定理とその特異点への応用に関する論文を書き上げることも出来た。Dimca氏はD加群と特異点論に精通した研究者であり、Sticlaru氏は計算機実装に極めて強い。よってこの研究を本研究計画に活かすことで、大きな進展が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、セビリアのCastro氏とNarvaez氏との間における、問題の共有・統一言語化・新しい理解の獲得という第一の進捗、及びDenham氏とWalther氏との間における、Master functionとその定義イデアルを用いた、Solomon-寺尾複体とLiouville複体及びそれらのホモロジーに関する統一的な理解の方向性の観察、といった想定を超える成果を得ることが出来た。これは、予定より短くなった初年度のセビリアの滞在予定をカバーする成果である。 しかし、予定していたいくつかの打ち合わせ計画が、2020年に入ってからのコロナウイルスの世界的流行のためキャンセルとなり、当初の予定が若干狂っている。その点を加味して、進捗状況は概ね順調である、と若干の下方修正をした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は2019年度に得られた共通理解・問題意識・新しい視点をもとに、本格的にSolomon-寺尾複体とLiouville複体及びそれらのホモロジーの統一的理解、及びMaster functionとその定義イデアルとの関連を、D加群や特異点論、代数幾何学に表現論を駆使して得ることを目指す。これらについては2019年度のセビリア訪問における議論や東京での議論によって、相当程度目途が立っており、少なくともスムースにスタートできるものと考えている。2020年度前半はこれらについて、メールベースで共同研究者らとともに理解を深め、2020年8月から予定しているセビリアでの長期滞在に備える。 しかしながら、2020年から始まったコロナウイルスの世界的流行は、スペインに大きなダメージを与えており、予定通り2020年8月からセビリアに滞在できるかどうかは不透明である。2019年の滞在時にCastro氏と話し合って、2020年4月から5月中に一度、セビリアを訪問して打ち合わせをし、研究を深めることを決定していたが、コロナウイルスの状況を鑑みるとそれは無理であろうと先方からも連絡を受けており、計画に流動性・不確定性が生じている。よって今後とも共同研究者や関係機関と緊密に連絡を取り、渡航計画の調整を検討しつつも、研究計画自体は様々な手段を用いて着実に遂行してゆく。
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