2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Solomon-Terao complexes by using D-module theory
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18KK0389
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 超平面配置 / Solomon-寺尾複体 / D加群 / Liouville複体 / 対数的微分加群 / 自由配置 / SPOG配置 / オイラー列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究計画の中心をなす長期海外滞在を実施予定であった。即ち、スペインのセビリアに半年間渡航・滞在の上で、Castro氏及びNarvaez氏と、Solomon-寺尾複体とD加群との関係について研究を深める予定であった。しかし、コロナウイルスのスペインでの大流行により、渡航は延期せざるを得なくなった。そのための折衝、予定の調整に関する連絡がセビリア側とは多くなってしまい、当初予定していた通りには研究を進めることはできなかった。 他方、Solomon-寺尾複体とLiouville複体の類似性という本研究における重要な点を議論したGraham Denham氏とは、その議論を進める流れで、共同研究を開始した。その中で、Liouville複体との類似性が指摘されている、Solomon-寺尾複体の双対版に現れる対数的微分加群の基礎理論に、大きな進展をもたらすことができた。まず、対数的微分加群におけるオイラー列を、極の言葉を用いて多重配置のレベルで定式化することに成功した。多重でない場合はZiegler氏が30年ほど前に達成していたが、その証明は圏論的であり、手法が異なる。この結果を用いて、自由な対数的微分加群を与える超平面配置に一枚超平面を付け加えた場合、得られる対数的微分加群は自由もしくはSPOG配置となることが分かった。SPOG配置は研究代表者が定式化した、自由の次に良い代数構造を持つ配置であり、近年特異点論などから注目されている。対数的ベクトル場の場合、自由からの一枚除去について同じ結果が成立しており、双対である対数的微分加群はそれが全く逆になっているというのは驚くべき発見であった。これを、研究代表者が以前定式化した、負の重複度の概念を用いて統一的に理解する試みも開始しており、これらの研究は対数的微分加群の研究に新しい基礎を打ち立てるものになる、重要な研究であると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やはりコロナウイルスの流行により、予定していたスペイン・セビリアへの半年の滞在ができなかったことの影響が極めて大きい。この六か月の間に、Solomon-寺尾複体とD加群及びLiouville複体の関係を解き明かし、Graham Denham氏やUli Walther氏らを招いて研究の大本を固めるつもりであった。それが全くできなかったことを鑑みて、やや遅れていると判断した。しかしDenham氏との共同研究が進展し、Liouville複体の基礎に新しい視点を当てることができたことを好材料とし、この遅れは回復可能であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはスペイン・セビリアへの渡航計画の練り直しが急務である。2021年度中に実施できればよいが、コロナウイルスの流行状況は変異株の発生などもあり、2021年4月段階では全く見通せない。セビリア側と緊密に連絡を取り可能性を探るが、渡航には様々な準備が必要でもあるため、2022年度まで研究期間を延長したうえで、2022年度に渡航するという可能性も含めて計画を随時更新することで、本研究計画を実施したい。そのためには今年度中に一度短期で渡航し、様々な事前準備を整える必要があり、そのための旅費使用を考えている。それがどうしても難しい場合には、ビデオ会議などを主とした打ち合わせに切り替えて、渡航準備及び研究の事前準備を実施する。 またDenham氏との共同研究はまだ継続中であり、様々な古典的問題が、我々の研究成果により解決される可能性がある。よってこれをメール及びビデオ会議ベースで実施し、論文としてまとめ上げることを2021年度中の目標とする。更にコロナウイルスの流行が落ち着けば、2021年度後半に本研究費を用いてDenham氏を招へいあるいは訪問することで、直接議論し飛躍的な進展を目指す。
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Research Products
(3 results)