2018 Fiscal Year Research-status Report
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18KK0390
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
野澤 和生 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00448763)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶は、1984年に最初の報告がなされた後、熱力学的に安定な準結晶が相次いで発見され、現在では100以上の合金系準結晶の他、高分子系、ナノ粒子系、最近では隕石中にも見いだされるなど多様な物質相で見いだされており、特殊な物質相というより、物質の普遍的な凝集形態のひとつと考えるのが妥当な状況になっている。しかしながら、これまで発見された準結晶は全て複数の元素からなるものであり、単一の元素からなる準結晶は見いだされていない。2000年頃から、既存の3元準結晶を基板として用い、この上に異種元素を蒸着することで単元素からなる準周期構造の薄膜を得ようとする試みがなされ、実際にいくつかの系で単原子層の超薄膜が得られている。我々は2013年に、複数の原子層からなる単元素準結晶超薄膜を世界で初めて作製することに成功し、蒸着層が基板の構造を模して成長していることを明らかにした。基研究は、この構造と電子状態の関係を調べるものであり、本研究はその知見を基に、渡航先研究機関(Surfeace Science Research Centre, University of Liverpool)の海外共同研究者と協力して準周期薄膜の成長過程の解明を目指すものである。 以下では、2018年3月9日に交付申請書を提出した後、2018年3月31日までの約20日間に行った研究実績の概要を報告する。この期間には、海外共同研究者と渡航期間や渡航後の研究計画について、課題申請後に得られた計算結果や渡航先研究機関で得られた実験結果を踏まえて、より具体的な研究計画を議論するとともに、研究実施期間中に試用する計算機の選定、ビザの申請などの渡航準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
渡航のための英国ビザの取得を含め渡航準備に時間を要し、研究時間の確保ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は渡航の準備をすすめ、5月上旬に渡英する予定である。渡航後はまず、海外共同研究者とこれまでの互いの研究成果について細部にわたって確認する。この後、申請者は今回の研究実施のために購入した計算機や共同利用施設のスーパーコンピュータを使用して、第一原理計算によりAg-In-Yb準結晶5回表面上におけるPb, Bi, Sb, Agの安定な吸着構造を調べ、各吸着段階の原子構造とその電子状態を比較することで単元素準周期薄膜の成長過程の支配因子を探索する。最近、海外共同研究者のグループでは、5回表面以外の表面を基板に用いた実験も行われていることから、この実験に対応する計算の準備も始める。海外共同研究者は、実験結果と申請者が行った計算結果を比較した結果、追加の実験が必要であれば実施する。6ヶ月を目処に一時帰国し、渡航中の研究成果を整理した上で再渡航する予定である。
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