2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18KK0390
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
野澤 和生 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00448763)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 表面 / 吸着 / 薄膜 / 準結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Ag-In-Yb準結晶5回表面上に形成されるPb, Biなどによる単元素準結晶超薄膜の原子構造と電子構造の解明を目指している。 走査型電子顕微鏡(STM)を用いた実験によれば、Ag-In-Yb準結晶5回表面に蒸着されたPb, Biは、いずれも初期段階で一辺0.9nm程度の5角形(第1層)を形成し、更に蒸着量を増やすと一辺1.5nm程度の5角形(第2層)を形成する。しかしながら、その詳細には吸着元素依存性がある。本年度は、このPbとBiの第1層、第2層の構造において元素依存性が現れる点を重点的に調べた。 第一原理計算により、蒸着元素としてBiを用いた場合の第1層の占有サイトがほぼ特定できた。しかしながら、この2つの吸着サイトの表面からの高さは0.04nm異なっており、Tersoff-Hamann法により計算されたSTM像は、実験で得られた像と異なっていた。シミュレーションによれば、2つの5角形の高さの差が0.02nm程度であれば実験のSTM像を再現できることから、実験では観測されていない吸着原子層が存在する可能性が示唆された。このような、STM実験で観測されない原子層が存在する可能性は、本研究の基研究(17K05059)でも示唆されていた。これまでの研究により、吸着の初期段階においてPb, Biは基板準結晶の原子サイトを部分的に占有していると考えられることから、実験で観測されない原子層として、基板準結晶のいくつかの原子サイトを仮定して詳細な吸着構造の分析を行ったところ、基板準結晶の基本構造ブロックである殻状原子クラスタの第5殻の一部が占有された場合に、Bi第1層のSTM像を再現する結果が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験結果の完全な理解・再現には至っていないが、BiがPbと異なる吸着構造をとる理由が、基研究で問題にしていた「STM実験では観測されていない原子層」の存在にある可能性を見いだすことができた。また、滞在先での議論から生まれた新しい着想もあり、最終年度へ向けて順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に見いだした可能性や着想をもとに実験結果の完全な理解・再現を目指す。再度渡英して共同研究を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で渡航できない場合はビデオ会議などを利用して共同研究を継続する。
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Research Products
(8 results)