2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な動物種の細胞エネルギーフロー解析と生物普遍的な治療法の探索
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18KK0398
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新井 敏 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (70454056)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | ATP / 熱 / 温熱療法 / イメージング / 蛍光センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
生命システムにおいて、小器官レベルで生じた熱が、個体組織へどのように広がっていくのか。その異なる階層における熱の時空間動態は良くわかっていない。申請者は、これまでに、この熱動態を可視化する技術として、異なる型の複数の蛍光温度センサーを開発し、様々な階層での温度マッピングに成功してきた。更に、この熱を積極的に制御することにも取り組み、細胞内に熱源を作る技術で、熱産生を人工的に再現することに成功している。 本研究課題では、国際共同研究を通してこれを発展させる。具体的には、非モデル生物を含む細胞のエネルギーマップの作成(温度とATP)と、熱源を作製する技術で、がんや筋肉の温熱療法を志向した細胞レベルの研究の2つを柱としている。両方の試みに必須な生体試料として、動物細胞の培養が必要なため、初年度に、添加する抗生物質を含めた培養条件の検討を広く行った。今年度は、これを大きく推進する予定であったが、コロナ禍で渡航不可となったため、予定を大きく変更して、現地に資材を送り、共同研究先のスタッフで培養できるように南洋理工大のラボにセットアップを依頼した(当初、予定には無かった)。結果、年度後半には、サンプリングを開始できる体制が整った。また、取得できた細胞を解析するための準備として、日本側で目的に適した蛍光顕微鏡を立ち上げた(FAST-FLIM)。更に、初年度、渡航先の共同研究者の研究室で、熱による治療法に必要な新たな光熱変換材料を見出していたが、これをナノ金属材料の合成(無電解メッキ)の論文としてまとめ、共著論文成果として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に調製した鶏の胸筋のグリセロール筋と、ナノサイズの熱源を組み合わせて、筋肉の収縮に関わるタンパク質の相互作用を熱的に制御する実験を継続して行い、再現性のある結果であることを確認した。 コロナ禍で、渡航予定が全て不可となったため、主に成果をまとめるための日本側での追加実験(光熱変換材料の無電解メッキ合成)と、現地関係者とのオンラインでの打ち合わせを中心に研究を進めた。特に、無電解メッキの系については、当初想定していた以外の応用先も複数でてきており、今後、より発展的に研究を進められる状況である。しかし、細胞実験と動物実験に関連する予定は、研究開始当初の想定から遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、シンガポールへ渡航ができておらず、見通しも立たないため、引き続き、サンプル郵送を通して可能な限り、当初の予定を遂行する。具体的には、培養に成功した細胞の輸送が可能であれば、これを用いて、日本側で細胞エネルギーマップの作成のためのイメージング実験を行う。また、共同で開発した光熱変換材料についても、日本側で細胞実験等を行い対応する。幾つかの次善策を施しながら、渡航できるタイミングが来た場合は、現地で非モデル生物の細胞培養や、治療法に関わる実験を遂行する。なお、年度末時点の研究の進行具合を鑑みて、1年間の期間延長を検討する。
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