2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Multi-scale structural-properties evaluations for wood resources aiming at advanced processing
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18KK0417
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三木 恒久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20415748)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 木材・木質材料 / 評価技術 / 微細構造 / 物性 / 変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、化学修飾した木材の微細構造評価として、赤外分光法(FTIR)、固体核磁気共鳴分光法(固体NMR)による検討を行っている。エステル化処理により木材には熱流動性が付与される過程について、主要三成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンの分子構造変化、それから形成される細胞壁構造の観点からその要因を調べた。 エステル化処理の反応試薬・条件によって、木材の外観、材色、重量・寸法が変化した。特に、大きく膨潤した木材は、熱分析において明確なガラス転移を示し、圧縮試験において顕著な熱可塑性・流動性を発現した。これらのエステル化木材は、水酸基がエステル基に置換されており、その進行に伴い、熱可塑性・流動性が向上する(変形抵抗が低下)傾向にあった。一般には変形抵抗の大きい繊維方向への変形も生じた。 調湿木材のプロトン(1H MAS)NMRスペクトルから、重量増加が大きいほど疎水性が向上することを確認した。また、カーボン(13C CP-MAS)NMRスペクトルにより、エステル化処理の方法によって、セルロースとリグニンの反応の程度が異なり、木材本来の階層構造が破壊されていくことがわかった。 処理の程度が異なる木材の1H MAS NMRと緩和時間(T1H)の解析により、反応は細胞壁外表面から生じ、順次、細胞壁内へと階層構造の破壊を伴いながらセルロースと反応することが推測された。反応初期では、残存する水酸基に水分子の吸着が生じるが、エステル基への置き換えが進行することによって疎水性が増大し、さらに嵩高いエステル基の導入により内部空隙を得て膨潤していくという反応過程を想像した。内部空隙の増加によって、分子可動性が向上し、熱可塑性、変形抵抗の低下、流動性が向上した。さらに、反応条件が過度に進行した場合は、セルロースの低分子化などの破壊が進行するため、繊維方向への可動性も増加したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス拡大防止のため、引き続き、産総研職員としての海外渡航ができない状況にある。当初計画していた赴任スケジュールを見直しながら、国内で実施できる検討課題を推進しながら、新たな計画を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
依然として、海外赴任ができない状況にあるため、当初赴任先で実施予定であった顕微ラマン分光法によるケミカルマッピングの検討課題について、産総研内で実施できるように調整しているが、性能上も問題を解決する必要が生じている。局所物性測定に関しても、可能な限り、国内で対応できるように再考しており、国内での研究分担者とともにETH/Empa研究者と議論できる準備を進めている。
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