2020 Fiscal Year Research-status Report
Structural role of CaMKII in PSD and the induction of LTP by optpgenetics.
Project/Area Number |
18KK0421
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
細川 智永 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (30602883)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | シナプス可塑性 / シナプス / 長期増強 / 記憶 / 液液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
CaMKIIはカルシウム依存性キナーゼであり、学習に伴うカルシウム流入により活性化して長期増強や長期抑圧などのシナプス可塑性を実行する因子であると考えられてきた。しかしながら、その過大な発現量と特徴的な12量体構造はキナーゼとしての役割からは合理的に説明ができず、別の役割があると推測された。近年では細胞内における液―液相分離による蛋白質の集合体形成が注目されている。そこで香港科学技術大学のProf. Mingjie Zhangとの共同研究を主軸に、シナプス長期増強時のシナプス後肥厚(PSD)におけるCaMKIIの果たす構造的役割について解析した。Zhang教授はこれまでに精製タンパク質を混合することで液-液相分離としてPSDを再構築することに成功している。この再構築PSDにCaMKIIを加えてカルシウム刺激を行ったところ、CaMKIIとNMDA受容体の液-液相分離による蛋白質の相分離集合体が形成された。また、AMPA受容体の局在を決定する因子でありPSD-95結合タンパク質であるAMPA受容体サブユニットStargazinを加えた系で同様の実験を行ったところ、相内相の形成による三相構造をとることがわかった。この三相構造はシナプスの超高解像顕微鏡による観察で見られる、AMPA受容体等の特定の蛋白質が集合したナノドメインと酷似していた。そこで京都大学でのプロジェクトとして培養神経細胞において超高解像顕微鏡を用いてシナプスを観察したところ、これまでの実験と同様にAMPA受容体とNMDA受容体が区画化されていることが分かった。さらに相分離集合体の形成を阻害したところ、その区画化が阻害されていた。以上のことは、CaMKIIのPSDにおける構造的役割を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CaMKIIの活性化によるPSD蛋白質の液-液相分離の形成および三相構造の形成は当初の予定を大きく超えるインパクトのあるデータであった。なぜなら、超高解像顕微鏡によるPSD内部のナノドメインの観察は、観察されるという事実だけが存在し、その形成機構に関しては全くの不明だったからである。ナノドメインの生理的意義として伝達物質受容体等の局在の伝達物質放出部位とのアライメントによる情報伝達効率の向上が報告されており、その形成機構の解明は急務であった。ナノドメインの形成機構は液-液相分離による三相構造の形成である可能性が有力であると思われた。そこで香港科技大とは引き続き共同研究を行いつつフランスボルドー大学のDaniel Choquetらのグループとの共同研究によりシナプスの超高解像観察への舵を切った。結果として、我々が再構築系で示した相分離が実際のシナプスで観察され、さらに相分離の阻害によってナノドメインの形成が阻害された。以上の結果は、CaMKIIの主導する液-液相分離がシナプス可塑性の本質であることを示唆している。以上の結果は、シナプス可塑性の新しいメカニズムとしてNature Neuroscienceに掲載された。これは香港科技大およびフランスボルドー大との共同研究により大きな発見をしたという意味で国際共同研究強化の期待に応えるものであるが、一方でCOVID-19の影響により当初の渡航計画を変更せざるを得なくなったことも鑑み、評価を一段階下げた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により記憶形成の本質はPSDにおける液-液相分離による蛋白質集合体の形成であることが分かってきた。特に液―液相分離による相分離集合体同士の混ざらない区画化によるナノドメインの形成および再編成はシナプス可塑性の新しいメカニズムである。そこで今後はこの原理を理解したうえで光操作の実験を進めていく。これまでは単に蛋白質の量や活性が操作できれば長期増強を引き起こせると考えてきたが、液-液相分離を原点に置くことでより効果的なシナプス活動の操作が可能となる。例えばCaMKIIは活性化されつつNMDA受容体と集合体を形成してナノドメインを形成することで長期増強を実現している。これを光遺伝学で再現するためにはCaMKIIの恒常活性型をLOV2ドメインでマスクしつつ同時にNMDA受容体との会合をCRY2/CIBNシステムで再現することが考えられる。こういった細胞内イベントを試験管内で再現することができるようになったことは大きなアドバンテージである。 本研究課題はこれまでに香港科技大とボルドー大学との共同研究によりNature Neuroscienceへの論文掲載をはじめとして大きな成果を上げてきた。その意味では国際共同研究強化の試みは成功したと言えるだろう。しかしながら渡航においては香港デモに続きCOVID-19の影響により、計画を変更せざるを得ない状況が続いている。特にCOVID-19の影響は2021年度になっても極めて大きく、我が国を含む各国の渡航制限は未だに解除されそうにない。すでにオンライン会議だけでも十分な連携が取れる状態であるが、科研費種目の趣旨とは異なるおそれがある。もう少しだけ様子を見て、改善されないようなら研究中止もやむを得ないと考えている。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Arc self‐association and formation of virus‐like capsids are mediated by an N‐terminal helical coil motif2020
Author(s)
Eriksen MS, Nikolaienko O, Hallin EI, Grodem S, Bustad HJ, Flydal MI, Merski I, Hosokawa T, Lascu D, Akerkar S, Cuellar J, Chambers JJ, O'Connell R, Muruganandam G, Loris R, Touma C, Kanhema T, Hayashi Y, Stratton MM, Valpuesta JM, Kursula P, Martinez A, Bramham CR
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Journal Title
The FEBS Journal
Volume: 288
Pages: 2930~2955
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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