2019 Fiscal Year Research-status Report
気管及び食道オルガノイドの立体構造の作成基盤確立と間充織極性化機構の解明
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18KK0423
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岸本 圭史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (70700029)
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Project Period (FY) |
2019 – 2020
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Keywords | オルガノイド / 呼吸器 / 食道 / 間充織 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ES細胞やiPS細胞から任意の臓器へと分化誘導する研究が進んでいる。さらに、オルガノイドよばれる臓器を模した3次元組織をin vitroで作成する技術が開発された。本研究では、オルガノイド研究において世界をリードするシンシナティ小児病院と連携して、気管および食道のオルガノイドの立体構造を安定的に作出する技術開発に挑んだ。臓器オルガノイドの作製は、これまで困難であった生体深部における細胞の挙動の可視化やヒト発生の理解に貢献する。 本研究課題ではまず、既報の手段に従って、オルガノイドの作製を試みた。胚発生の発生学的な知識に基づいた、連続的な増殖因子の添加によって、ヒトES細胞からの食道オルガノイドならびに呼吸器オルガノイドを作製することができた。しかしながら、作製したオルガノイドは、いずれも上皮組織を中心として構成され、臓器周辺を支える間充織はあまり含まれなかった。そこで、間充織を含む、より成体の臓器に近いオルガノイドを構築するため、臓器特異的な間充織細胞の誘導を試みた。臓器特異的な間充織の形成機構については、これまでよく知られていなかったため、マウス胎仔のsingle cell RNA-seq解析から間充織細胞の分化に必要な因子を予測した。これらの成長因子を組み合わせることによって、ヒトES細胞から呼吸器および食道の間充織をそれぞれ分化誘導することに成功した。今後は、呼吸器オルガノイドおよび食道オルガノイドに作製した間充織細胞を融合し、より高次的なオルガノイドを構築する。さらに、細胞の挙動を観察することによって、ヒト臓器発生の仕組みを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、気管食道オルガノイドの作製基盤を確立し、間充織組織が分化と共に極性化する過程を理解することを目指した。まず、呼吸器と食道のオルガノイドを作製するため、前駆体であるforegut spheroidを誘導し、その後、呼吸器と食道オルガノイドへとそれぞれ分化誘導した。いずれのオルガノイドも形成されたものの、食道オルガノイドへの分化効率に比べ、呼吸器オルガノイドへの分化効率が低かったため、foregut spheroidの誘導条件を再検討した。その結果、RAの添加およびFGFR阻害剤の前処理により呼吸器への分化効率が上昇することが分かった。これらの条件により、より高効率に呼吸器ならびに食道オルガノイドを作製することに成功した。一方、樹立したオルガノイドはいずれも、上皮細胞を主成分としており、間充織をほとんど含まなかった。そのため、オルガノイドに間充織を付加する必要性が生じた。そこで、ヒトES細胞から呼吸器ならびに食道の間充織を分化誘導する系の確立を試みた。まず、マウス胎仔のscRNA-seqのデータを元に、呼吸器および食道特異的に発現するマーカー遺伝子を単離した。さらに、間充織発生の過程で活性化するシグナル伝達分子を推定した。これらの発生過程を連続的な成長因子を添加により、in vitroで模倣することで、呼吸器ならびに食道の間充織細胞を誘導することに成功した。オルガノイドにおける間充織が想定外に少なかったため、間充織細胞の分化を誘導する実験を行うこととなったが、総じて、より高度かつ高効率に呼吸器および食道オルガノイドを作製することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討では、オルガノイド作成基盤を確立することができた。今後は作製したオルガノイドと間充織を融合することによって、より高度な呼吸器および食道オルガノイドを樹立する。加えて、foregut spheroidに呼吸器及び食道間充織を融合し、呼吸器と食道が連結したオルガノイドを作製することで、より発生の過程をin vitroで再現することを試みる。また、作製したオルガノイドの細胞の極性や増殖を初めとした性状を詳細に解析することによって、ヒト臓器発生のメカニズムに迫りたい。申請者らはマウス胎仔を用いた先行研究により、呼吸器・食道発生において、間充織細胞の極性化・協調的な運動にはShhならびにWnt signalingが関与することが示唆されている。そこで、樹立したオルガノイドに阻害剤を添加することにより、間充織の動態を説明するシグナル伝達機構を明らかにしたい。
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[Journal Article] Single cell transcriptomics reveals a signaling roadmap coordinating endoderm and mesoderm diversification during foregut organogenesis2020
Author(s)
Lu Han, Praneet Chaturvedi, Keishi Kishimoto, Hiroyuki Koike, Talia Nasr, Kentaro Iwasawa, Kirsten Giesbrecht, Phillip C Witcher, Alexandra Eicher, Lauren Haines, Yarim Lee, John M Shannon, Mitsuru Morimoto, James M Wells, Takanori Takebe, Aaron M Zorn
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Journal Title
Biorxiv
Volume: 861781
Pages: 1-49
DOI
Open Access / Int'l Joint Research
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