2021 Fiscal Year Research-status Report
気管及び食道オルガノイドの立体構造の作成基盤確立と間充織極性化機構の解明
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18KK0423
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岸本 圭史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (70700029)
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Project Period (FY) |
2019 – 2022
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Keywords | 気管 / 食道 / オルガノイド / ヒトES細胞 / 内胚葉 / 中胚葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞研究の進展により、ヒト臓器の3次元構造を模したオルガノイドの作製が可能になってきた。現在では、オルガノイドは培養皿上でヒト臓器形成の過程を研究する技術の一つとして注目を浴びている。昨年度に引き続き、本年度は、オルガノイド研究の分野において最先端の技術を有するシンシナティ小児病院と連携し、間充織を豊富に含む呼吸器ならびに、食道のオルガノイドを安定的に作出する技術基盤の樹立に挑んだ。これまでに報告されている呼吸器ならびに食道オルガノイドはいずれも上皮細胞を主体に構成され、周辺を覆う間充織組織はほとんど含まれていなかった。臓器発生の正常過程では、上皮組織と間充織が相互作用することが必須であることから、間充織細胞をオルガノイドに付加する技術の確立が求められていた。オルガノイドに対して、ヒトES細胞から作成した臓器間充織の前駆細胞を融合することにより、より複雑な構造を有したオルガノイドの作製を試みた。食道に関しては、間充織に富んだ構造を含むオルガノイドを作成することができた。その一方で、呼吸器オルガノイドでは、十分な上皮組織の成長・間充織の分化が観察されなかったため、細胞を混合する条件や細胞の混合比率の詳細な検討、種々の培養培地・成長因子の検討を行うことによって、間充織を含む呼吸器オルガノイドの誘導条件の検討を行った。さらに、作製した呼吸器オルガノイドの成熟をさらに促進するため、マウス腎被膜下への移植実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までの検討により、呼吸器上皮並びに食道上皮に分化可能な内胚葉スフェロイドに対して、ヒトES細胞から誘導した側板中胚葉細胞を融合する技術基盤を確立することによって内胚葉ー中胚葉からなる呼吸器食道前駆オルガノイドの作製した。本年度は、まず、内胚葉細胞と中胚葉細胞の数の比率を調節することで、生体の臓器に類似した組織構成のオルガノイドを作製した。次に作製したオルガノイドに対して、呼吸器および食道の分化誘導を行うことによって気管・食道のオルガノイドの作製を試みた。分化誘導を行うにあたり、必要な増殖因子・化合物の種類や濃度、曝露時間を検討を行った。その結果、分化誘導によって、呼吸器上皮細胞および食道上皮細胞への分化を観察することができた。しかしながら、間充織細胞は、依然として未成熟なままであり、呼吸器や食道の間充織固有の遺伝子発現は観察されなかった。そこで次に、オルガノイドを免疫不全マウスの腎皮膜下に移植することによってオルガノイドの成長・分化を促すことにした。興味深いことに、オルガノイドの腎皮膜への生着には、間充織細胞が必要であることが分かった。一方で、本実験条件下では、間充織細胞が十分に分化した条件を同定することがなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討では、オルガノイドに含まれる間充織細胞の十分な分化を観察することができなかった。間充織細胞の成長を誘導するためには、培養条件や期間、腎被膜下で培養する期間の最適化などの実験が必要となる。
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