2021 Fiscal Year Annual Research Report
南極洞窟に優占棲息する新奇生物資源クテドノバクテリア菌株の拡充と生理特性の解析
Project/Area Number |
18KK0424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢部 修平 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60564838)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | WPS-2 / Eremiobacterota / クテドノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南極のエレバス火山にある氷の洞窟からクロロフレクサス門クテドノバクテリア綱に属する細菌を分離することを目的とした。これまでにその氷穴の噴気孔付近に優占生息するクロロフレクサス門の姉妹系統「新門候補WPS-2」に属する細菌の分離に成功した。このメンバーは、南極の荒廃土壌、北極の永久凍土や火山性土壌に豊富に存在し、そのような「極限環境」の炭素循環において重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、未培養細菌門であったため、その代謝、生理、細胞構造、生態機能は未解明であった。 昨年度は、主にこの分離株のゲノムの特徴を明らかとした。その結果、既知の光合成生物とは系統的に異なる光化学系Ⅱ型反応中心やバクテリオクロロフィル(BCh)生合成の遺伝子セットがコードされ、炭酸固定経路としてIE型 RuBisCOを含むカルビン・ベンソン回路が完備されていることを明らかとした。また、微量ガスをエネルギー源とした炭酸固定の駆動に関わるhyy遺伝子がコードされ、大気化学合成能のポテンシャルが明らかとなった。 今年度は、主に培養実験に基づいて本系統の生活様式を解明した。その結果、この系統は、生育に高濃度のCO2を要求し、有機物を含む好気条件下において光照射により増殖やBCh生産が促進されることが示された。また明暗条件ともにCO2固定能を示した。以上から、本系統は炭酸固定能を有する混合栄養的な好気性酸素非発生型光合成細菌(AAnP)であることを証明した。興味深いことに、多くの光合成細菌は青色光に対して負の走光性を示すが、この系統は青色(470nm付近)、緑色(527nm)、赤色(624nm)の幅広い波長に対してIV型線毛による正の走光性を示した。
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