2020 Fiscal Year Research-status Report
海底湧水が創出する生物生産ホットスポット:気候帯レベルでの比較
Project/Area Number |
18KK0428
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00533316)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 海底湧水 / 植物プランクトン / 浅海域 / 栄養塩 / 炭素 / 生物生産 / ラドン / ラジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、山形県釜磯海岸での調査①に加え、気仙沼舞根湾での調査②を追加的に実施し、海底湧水に対する植物プランクトン(PHY)の応答を評価した。 ①対象海域に6測点を設け,6時間ごとに4回のサンプリングを行った。ラドン・ラジウム同位体に基づく物質収支モデルを構築し、地下水流入量および栄養塩輸送量を定量した。また、地下水湧出に対する植物プランクトンの応答を評価するために、明暗瓶を用いた24時間培養実験を行い、栄養塩の取り込み速度も推定した。モデルから推定された淡水性地下水(FGW)の流入量は248m3/d、再循環性地下水(RGW)の流入量は2881m3/dであった。地下水RGWFGW+RGW)による栄養塩輸送量は、窒素で25.0mol/d、リンで1.4mol/d、ケイ素で642.0mol/dであった。このうち、リンとケイ素のそれぞれ62%と78%をRGWが占めていたのに対し、窒素の49%はFGW由来であった。一方、PHYの純一次生産量は一日当たり0.35mgC/Lであった。レッドフィールド比をもとに推定される栄養塩同化量は、窒素で27.6mol/d、リンで1.7mol/d、ケイ素で25.9mol/dであり、窒素とリンの輸送量が同化量の約70%に相当していた。このことから、釜磯海岸の生物生産の大部分が、地下水が供給する栄養塩をベースに成り立っている可能性が強く示唆された。 ②舞根湾では、陸起源栄養塩の負荷に対するPHYの応答を評価するために、表層海水を採取し栄養塩およびそれぞれの陸水(河川水・FGW・RGW)を添加した。窒素を含む添加液や湾外水と比べて窒素を多量に含む陸水の添加区では対象区と比較し有意に高いChl-a濃度(3日培養後)を示した。このことは舞根湾へ支配的に流入する湾外水へ窒素を豊富に含む陸水が追加的に負荷されることで効率的に一次生産が生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響により、オーストラリアでの調査がまったくできず、国内調査も山形県と宮城県で実施したものを除き、当初予定していたものはほぼ実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査を実施することは現状難しいため、国内の調査地点を新たに設けて、研究課題の目的を達成できるように努める。
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Research Products
(6 results)