2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigating patological function of a novel antibody against neutrophil cytoplasmic granules
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18KK0431
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
永井 恵 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00734352)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 抗好中球細胞質抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管炎は好中球細胞質の分子(MPOなど)に対する抗体(ANCA)により病態が形成される。MPO-ANCA産生機序解明の基課題で、血管炎マウスモデルにおいて、新規抗好中球細胞質抗体が産生されることを見出した。その新規自己抗体はヒト血管炎患者で発見されているが、産生機序、血管炎病態への関わりは不明である。 本国際共同研究では、その自己抗体に病原性があるか、マウス糸球体腎炎モデルで多くの業績を挙げる研究機関で検証し、その分子メカニズムを国内で解明することを目指す。マウスに抗原を免疫し、新規自己抗体を産生させ、腎糸球体に対する血清を投与して糸球体腎炎を誘導し、その表現型の強さを評価する。病原性の証明には、本研究施設で樹立した信頼性の高い対照モデル(MPOおよび卵白アルブミン:OVAの免疫により発症する腎炎)が不可欠である。さらに、病原性の高い抗原ペプチドの配列を同定することで、自己免疫の活性化、制御のメカニズムを詳細に解析する。 MPO-ANCA陽性でも無症候の場合が少なからず存在し、リンパ球の認識するMPO分子のペプチド配列(エピトープと呼ぶ)により病態が異なる(Ooi et al, PNAS 2012)。本研究は新規自己抗体の糸球体腎炎における病原性をペプチドレベルで探索し、それを治療モデルでも証明することを目的に、I. 自己抗体による血管炎評価、II. 血管炎腎組織における抗原蛋白の局在解析、III. 病原性ペプチドの同定、IV. 抑制性ペプチド経鼻投与による治療モデル、の順に検証していく。 渡航前は新規抗体の産生に関する分子メカニスムを研究代表者が行う。同定された病原ペプチドの生化学的、遺伝医学的意義を臨床サンプルなどを用いて帰国後に研究代表者かを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内で行うべき課題として、好中球細胞質の顆粒分子PTX3のペプチド配列のサンプル作成とin vivo, in vitroのスクリーニング解析があり、8割程度終了した。マウスに特定のペプチドを不完全フロイントアジュバンドと免疫し、脾臓細胞を採取、主にT細胞の抗原特異的な反応をT-SPOTなどで定量した。結果として、46のペプチド配列のうち、PTX3の属するペントラキシンファミリーに共通するドメインに存在するペプチド(2配列;pep#26, pep#32)に極めて強い抗原特異的反応が見られた。また、非特異的なT細胞反応を来すもの、全く反応しないものも複数同定することができた。これらは、今後のin vivoおよびin vitroの解析を通してコントロールとして重要な意味がある。 二次的なアミノ酸レベルの詳細な解析は必要であるが、特定されたペプチドを大量かつ長期で免疫する方法で、自己免疫病の病態が形成されるかの観察する予備実験は開始した。また、自己免疫性腎炎惹起のための新規実験系の開発に取り組み始めた。ただし、ネガティブコントロール、ポジティブコントロールの設定は極めて難しいことが、申請者および共同研究者の検討から明らかであり(Nagai K, Gan PY, et al. in preparation)、やはり当初計画の完遂には海外渡航が望ましい。 他方、新型肺炎ウイルスCovid-19により、2020年1月に研究ビザ発給のため、先方(Monash大学人事課)に依頼したNominationは同年3月に一時保留された。世界的パンデミックの状況下で今のところ渡航のめどは立たず方策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航前の新規抗体の産生や機能に関する分子メカニスムの解明を次年度(R3)に可能な限り行う。すなわち、今年度(R2)は、T細胞の特異的反応に着目した解析であり、同時に抗体産生されることも確認しているので、その抗体に病原性があるのかを知る必要がある。具体的には、候補となる抗原ペプチドを免疫した動物より血清を採取し、免疫グロブリン分画を抽出して、免疫されていない動物に投与する受動免疫の系を用いる。 新型肺炎ウイルス(Covid-19)の影響で渡航の目途はたたないが、すでに渡航先の研究者とは現地で共同研究を行った実績もあり(2017年~18年)、電話やビデオ会議などで可能な部分の解析・実験準備を計画する。 今年度(R2)のin vivoおよびin vitroの解析に加えて、病原性のあるペプチド配列の同定を可能な限りin silicoで行う。これに関しては、既に本研究の共同研究者Josha D Ooiには技術がある(Ooi et al. Nature 2019)ため、助言を得る。
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